石川総安

石川総安は、常陸下館藩主・石川総般の次男として生まれ、後に伊勢亀山藩主・石川総佐の婿養子となり家督を継ぎました。彼は儒学と和漢の学問に秀でており、「鈴鹿郡野史」には「東洋的な明君」と評されています。

文政3年（1820年）に藩主となった総安は、まず藩財政の立て直しに取り組みました。倹約を奨励し、家臣の禄高を改正、不正を厳しく取り締まることで、困窮していた藩財政を再建へと導きました。また、儒学や国学に通じた教養人であった彼は、藩の教育改革にも力を注ぎました。

文政4年（1821年）には、長年藩政を担ってきた藩年寄・加藤善太夫を退かせ、由良渓右衛門を郡代に登用しました。翌年には、幼年者向けの教育施設である柔順寺学寮で読書教授料の徴収を廃止し、子弟教育の徹底を図りました。さらに、文政7年（1824年）には藩士教育機関である「明倫舎」を新築移転し、新たな儒学者を招聘して教育環境を刷新。藩主自らが講義を聴講する場を設け、藩内教育への熱意を示しました。

財政再建のため、藩士の禄高改正を行うとともに、領内各村の会計検査を実施。天保元年（1830年）には、伊勢鈴鹿郡阿野田村の大庄屋の不正を暴き、翌年には同村の役人による税の着服を明らかにするなど、徹底した不正取締を行いました。不正を働いた者は死罪に相当する罪でしたが、総安は罪一等を減じ、永牢としました。

天保4年（1833年）に江戸で亡くなりました。長男の総禄は幼少であったため、婿養子の総紀が跡を継ぎました。

石川総安は、藩主として財政再建、教育改革、不正取締りに尽力し、藩政の安定に貢献した人物として知られています。

系譜

実父: 石川総般
養父: 石川総佐
正室: 石川総師の娘（石川総佐の養女）
子女:
石川総禄（長男）
吉田良熈室（長女）
石川総紀正室
養子: 石川総紀（石川総登の次男）

参考文献

『新訂 寛政重修諸家譜 第3』続群書類従完成会、1981年
『石川家譜難波録』
『鈴鹿郡野史』（柴田厚二郎 1947年）
『鈴鹿郡郷土誌』（三重県鈴鹿郡教育会 1915年）

外部リンク

* 亀山市史

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