石川総紀

石川総紀：伊勢亀山藩主としての生涯と功績

石川総紀（いしかわ ふさのり）は、文化12年（1815年）に旗本石川総登の次男として江戸で生まれました。伊勢亀山藩の第7代藩主石川総安が亡くなった際、嫡男の総禄が幼少であったため、総紀が養子として迎えられ、第8代藩主となりました。

藩主就任と天保の大飢饉

天保5年（1834年）、総紀は従五位下、日向守に叙位・任官されました。しかし、その治世は困難を伴いました。天保7年（1836年）には、松平康任の腹心を預かることとなり、翌年には大暴風雨とそれに伴う大飢饉に見舞われます。この天保の大飢饉では、鈴鹿郡で多数の餓死者が出るなど、領内は甚大な被害を受けました。総紀は、この危機に対し、ただちに蔵米を放出し、豪農や巨商に米を廉価で販売させるなど、迅速な対応を取りました。また、高禄の家臣たちも自らの蔵米や軍用米を貧民や下級藩士に分け与えるなど、藩全体でこの難局を乗り越えようとしました。

さらに、支藩である常陸下館藩も窮乏しており、亀山藩は年間収入の3割強を支援せざるを得ない状況でした。このため、亀山藩では藩士の家禄に応じて徴税を行い、財政を立て直す必要がありました。

老中就任の辞退と藩政

総紀の飢饉対策は幕府からも高く評価され、嘉永2年（1849年）には老中への推薦がありました。総紀自身も老中就任を望みましたが、藩の財政状況を憂慮した家臣の佐藤四兵衛が、老中として国事に専念すれば藩の維持が困難になると進言し、総紀は老中就任を断念しました。この一件は、藩士の間で意見が分かれる事態となり、江戸詰め家臣が総紀の老中就任を喜び、国許の藩士がこれを引き留めようとするなど、藩内は混乱しました。

当時の亀山藩は、過去からの財政難に加え、飢饉対策や支藩支援により、藩債が33万両にまで膨れ上がっていました。一方、藩の収入は6万両程度で、藩債の利息や家臣の俸米を支払うと、諸経費に回せる資金はわずかしか残らないという厳しい財政状況でした。

嘉永6年（1853年）、総紀は家督を養子の総禄に譲って隠居しましたが、その後も藩政の実権を握り続けました。総禄は勤皇派の家臣を登用しましたが、総禄の死後、総紀は勤皇派を退け、保守派の家臣を中心に藩政を行いました。

晩年と死

明治維新へと向かう激動の時代、総紀は跡を継いだ四男の総脩や六男の成之に先立たれ、孤独な晩年を送りました。明治19年（1886年）、東京にて72歳で生涯を閉じました。

系譜

実父：石川総登
養父：石川総安
正室：石川総安の娘
子女：森川俊徳（次男）、石川総脩（四男）、石川成之（六男）
養子：石川総禄（石川総安の長男）

参考資料

『新訂 寛政重修諸家譜 第3』
『石川家譜難波録』
『鈴鹿郡野史』
『鈴鹿郡郷土誌』

外部リンク

亀山市史
* 温故知新 東海道の昔の話

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