石津郡

石津郡（いしづぐん）の概要

石津郡は、かつて美濃国（現在の岐阜県）に存在した郡です。この郡は、特異な地理的特徴を持っており、多芸郡を挟んで東西に分断された飛び地のような形状をしていました。この独特な地形が、後の郡の分割に大きく影響しました。

郡域

石津郡の領域は、現在の行政区画に正確に対応しているわけではありませんが、おおよそ以下の地域に相当します。

大垣市の一部: 現在の大垣市上石津町一帯。
海津市の一部: 南濃町戸田、南濃町徳田、南濃町庭田の南東部、および海津町福岡、海津町高須町、海津町馬目、海津町内記、海津町札野、海津町深浜、海津町江東、海津町福江、海津町古中島の南西地域。
養老郡養老町の一部: 沢田、桜井地域。

このように、石津郡は複数の市町村にまたがる広範囲な地域を包含していました。

歴史

石津郡は、斉衡2年（855年）に多芸郡の南部を分割して設置されました。郡名の由来は、この地域を開拓したとされる石津連にちなむと伝えられています。郡内には、大庭、建部、桜樹、山崎の4つの郷がありました。郡役所は山崎郷に置かれていたと推測されています。

江戸時代初期には、高須藩（徳永家）と多良藩（関家）という二つの藩が存在しました。その後、高須藩は尾張藩の支藩（尾張松平家）となり、多良藩は廃止されました。多良藩の跡地には、交代寄合である美濃衆の高木家（西高木家、東高木家の三家）の陣屋（西高木家陣屋）が設置されました。

近世以降の沿革

石津郡の所属町村は、複雑な変遷をたどりました。詳細については、上石津郡および下石津郡のそれぞれの沿革を参照してください。

明治初年時点での支配状況は、「旧高旧領取調帳」に記録されており、幕府領は美濃郡代が管轄していました。その他、寺社領も存在していました。当時の石津郡は、1町81村で構成されていました。

後の上石津郡域（37村）: 幕府領（美濃郡代）、旗本領、大垣藩、今尾藩、尾張名古屋藩
後の下石津郡域（1町44村）: 幕府領（美濃郡代・大垣藩預地）、高須藩、大垣藩、尾張名古屋藩

慶応4年（1868年）には、幕府領や旗本領が笠松裁判所の管轄となり、その後、笠松県の管轄となりました。明治初年には、領地替えによって名古屋藩領の一部が笠松県の管轄となりました。

明治3年（1871年）には、高須藩が廃藩となり、その領地は名古屋藩領となりました。明治4年（1871年）の廃藩置県により、藩領は名古屋県、大垣県、今尾県となりました。同年、第1次府県統合によって、全域が岐阜県の管轄となりました。

明治7年（1874年）には、馬飼村が中島郡川東村と合併し、中島郡馬飼村となりました。明治8年（1875年）には、高柳古新田・高柳新田・小坪新田が安八郡大牧村と合併し、多芸郡大巻村となりました。

明治12年（1879年）には、郡区町村編制法の岐阜県での施行に伴い、多芸郡を挟んだ西側21村の区域に上石津郡が、東側32村の区域に下石津郡がそれぞれ発足し、石津郡は消滅しました。

その他

石津郡は、その成立当初から飛び地状態にあり、西側が山間部、東側が平野部という地理的な特徴を持っていました。上石津郡は養老郡上石津町（現在の大垣市の一部）に、下石津郡は海津郡海津町（現在の海津市の一部）にほぼ相当します。

石津郡が分割された後、上石津郡は多芸郡と統合されて養老郡となり、下石津郡は海西郡と統合されて海津郡となりました。どちらの郡も短期間で消滅しています。

参考文献

「角川日本地名大辞典」編纂委員会 編『角川日本地名大辞典』 21 岐阜県、角川書店、1980年。
旧高旧領取調帳データベース

関連項目

消滅した郡の一覧
* 浅井郡: 近江国（滋賀県）にあった郡で、本郡と同様に飛地を形成しており、郡区町村編制法の施行により、飛地がそれぞれ分割されました。

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