砂漠の野球部

砂漠の野球部

『砂漠の野球部』は、コージィ城倉（連載当時はコージィ♡城倉）による野球漫画作品。『週刊少年サンデー』にて1995年から1997年まで連載され、熱血スポ根漫画のパロディとラブコメ要素を織り交ぜた作風で人気を博しました。単行本は少年サンデーコミックスより全11巻が発刊されています。

概要

作者の代表作であり、スポ根漫画のパロディ的な要素を多く含んだ野球漫画です。連載当初はコメディータッチな作風でしたが、中盤からはスポ根的な展開が中心となりました。また、高校野球が抱える問題点も皮肉を込めて描かれており、後の作品『おれはキャプテン』にも通じるテーマが盛り込まれています。

あらすじ

第1部

鳥取県の私立女子高校「オアシス学園高校」の島貫校長は、生徒数減少に悩んでいました。そこで、野球の名門校「相模大学付属横浜中央高校」を視察した際、野球部を退部した生徒達をオアシス学園に転校させ、甲子園を目指すことを思いつきます。様々な理由で野球を諦めた9人の1年生は、甲子園への夢を再び追いかけるため、オアシス学園への転校を決意します。

しかし、転校したものの、練習場所の確保から苦労が絶えません。主人公のツッチーこと土屋拳至は、グラウンドの使用権を賭けて、ソフトボール部顧問の井出時子（ジャンボーグ）と対決することになります。ジャンボーグは、広島カープの4割打者・トキオの双子の姉であり、高校時代は弟以上の実力を持つ天才バッターでした。

オアシスナインの実力を試すため、ジャンボーグは中国大会優勝校の鳥取青雲中学との対戦を組みます。同中学のエース・トキジはジャンボーグの弟であり、オアシスナインとの実力差に打ちのめされます。トキジを操っていた姉のあねごも改心し、オアシス学園に転校、野球部のマネージャーとなります。

春のセンバツに出場した鳥取東山は、ジャンボーグとトキオの母校でした。ツッチーのストレートは通用しませんでしたが、フォークボールで鳥取東山を打ち破り、試合はオアシス学園の勝利に終わります。しかし、その後、「親の都合以外で転校した野球部員は、1年間公式戦に出場できない」というルールを知らされ、オアシスナインはショックを受けます。

偶然から、あねごはプロ野球のチケットを手に入れ、ツッチーと2人で横浜スタジアムへ。そこでツッチーは、相模大横浜時代のライバル・フネと、かつての恋人・美香に再会します。美香を賭け、ツッチーとフネは勝負することになります。

オアシス学園は大門興業に乗っ取られ、解体の危機に瀕します。ツッチーは学園存続のため、大門興業に戦いを挑みます。他のメンバーも男子校への転校を拒否し、実力以上の力を発揮します。勝利したオアシスナインでしたが、代わりにジャンボーグが大門興業に引き抜かれてしまいます。彼女は後任監督にあねごを指名します。

第2部 砂の嵐編

あねごは監督就任を機に、ツッチーへの恋心を封印します。あねごの友人・アニメがマネージャーとして登場し、ナインの心を掴みます。トキジは、鳥取KCサンシャインハイスクールの主砲・trfと共にオアシスナインの前に現れ、成長した姿を見せつけます。しかし、trfの打棒をもってしても、ツッチーのフォークボールは打てませんでした。

trfとの出会いから9ヶ月後、オアシスナインは2年生になっていました。しかし、ツッチーは身長が伸びて身体のバランスを崩し、フォークボールのキレがなくなっていました。トキオのアドバイスにより、ツッチーはアンダースローに変更し、魔球サイレントカーブを開発します。

1回戦、2回戦と順調に勝ち進み、3回戦の鳥取東山戦でサイレントカーブの理論が完成します。ジャンボーグはサイレントカーブの秘密を解明しようとツッチーと対戦し、その秘密を暴きます。大門学園もその実力を発揮します。

試合前日、大門学園のエース・豊丸に「越境転校は卑怯」と指摘され、オアシスナインは戦意を喪失します。一方、サイレントカーブもカット打法に苦戦します。しかし、大門学園主将・風間の謝罪と、相模大横浜の梶原監督の登場により、オアシスナインは奮起し逆転優勝を飾ります。

相模大横浜との戦いでは、最後の力を振り絞り、ツッチーはブラッディフォークを使用し、パーフェクトで勝利しますが、負傷により2回戦は辞退することになります。

番外編では、あねご、ツッチー、タイガー、マカオ、アニメのその後が語られます。

主な登場人物

土屋拳至（ツッチー）: 本作の主人公。神奈川県出身で、オアシス学園高校の投手兼4番打者。決め球は魔球サイレントカーブ。後にプロ野球選手となる。
井出時子（ジャンボーグ）: 井出4兄弟の長女で、オアシス学園高校の監督。元ソフトボール部監督で、野球の才能にも恵まれている。
井出時夫（トキオ）: 井出4兄弟の長男で、プロ野球選手（広島カープ所属）。首位打者を獲得するほどの才能を持つ。
井出時江（あねご）: 井出4兄弟の次女で、本作のヒロイン。オアシス学園高校野球部のマネージャーであり、後に監督となる。高校卒業後は女子プロレスラーとして活躍。
井出時次（トキジ）: 井出4兄弟の次男（末っ子）で、鳥取KCサンシャインハイスクールのエースピッチャー。
別所光希（マカオ）: オアシス学園高校の捕手で、ツッチーの女房役。かつてはいじめを受けていたが、ツッチーとの出会いをきっかけに才能を開花させる。
福永高志（フク）: オアシス学園高校の遊撃手。肥満体型だが足が速く、ムードメーカー的存在。
弓岡剛太郎: オアシス学園高校の右翼手。バントの達人。
手塚隆介: オアシス学園高校の三塁手。
立花満津留: オアシス学園高校の左翼手。
森下雄太: オアシス学園高校の一塁手。
坂上敏樹: オアシス学園高校の二塁手。
小宮政志（タイガー）: オアシス学園高校の中堅手。虎のマスクを被ったような容姿で、無口な性格。
山崎カナ（アニメ）: オアシス学園高校のマネージャー。

魔球

サイレントカーブ: ツッチーが編み出した魔球。打者の手元で小さく変化し、タイミングを狂わせる。
サイレントファントム: サイレントカーブの派生球で、打者の手元で消えるように見える。
* ブラッディフォーク: ツッチーが最後の手段として使用した魔球。指から出血した血が付着することで、不規則な変化をする。

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