硬組織疾患

硬組織疾患（こうそしきしっかん）

硬組織疾患とは、人体において最も硬い性質を持つ組織である骨と歯に発生する、様々な病気の総称です。これらの組織は体を支えたり、食物を咀嚼したりといった重要な機能を担っており、その疾患は全身の健康に大きく影響します。

特に歯は、人体の組織の中で最も硬い部位です。そのため、硬組織全般、中でも骨や歯の形成・吸収に関わる細胞である破骨細胞や骨芽細胞といった細胞レベルの研究は、歯学分野が古くから得意とし、深く関わってきました。

主な硬組織疾患

硬組織疾患には非常に多様な種類があります。代表的なものを以下に挙げます。

歯の硬組織疾患

歯に発生する硬組織疾患は多岐にわたります。最もよく知られているのは虫歯（う蝕）です。これは細菌によって歯の硬組織が破壊される病気で、進行度や発生部位によってさらに細かく分類されます。

エナメル質う蝕: 歯の最表層であるエナメル質に限定された虫歯。
象牙質う蝕: エナメル質の下にある象牙質まで進行した虫歯。
急性う蝕: 短期間で急速に進行する虫歯。
慢性う蝕: ゆっくりと時間をかけて進行する虫歯。
根面う蝕: 歯茎が下がって露出した歯の根の表面にできる虫歯。

虫歯以外の歯の硬組織疾患には、以下のようなものがあります。

くさび状欠損: 歯と歯茎の境目あたりがくさび状に削れるように失われる状態。
咬耗症（こうもうしょう）: 歯ぎしりや食いしばりなどによって歯の咬み合わせ面がすり減る状態。
磨耗症（まもうしょう）: 誤った歯磨き方法や硬い食べ物など、機械的な力によって歯の表面がすり減る状態。
形成異常: 歯の発生段階で硬組織が正常に形成されない状態。
酸蝕症（さんしょくしょう／侵蝕症）: 酸性の飲食物などによって歯の硬組織が溶かされる状態。
破折（はせつ）: 外傷や過度な力によって歯が折れたりひびが入ったりする状態。
象牙質知覚過敏症: 象牙質が露出し、冷たいものなどで歯に痛みを感じる状態。
歯の変色と歯の着色: 歯の内部構造の変化や外部からの物質の付着により、歯の色が変わる状態。

骨の硬組織疾患

全身の骨に発生する硬組織疾患には、以下のようなものがあります。

骨肉腫（こついくしゅ）: 骨の組織から発生する悪性腫瘍（がん）。
骨粗鬆症（こつそしょうしょう）: 骨密度が低下し、骨が脆くなって骨折しやすくなる病気。
骨折（こっせつ）: 外力などによって骨の連続性が断たれる状態。複雑骨折、介達骨折、直接骨折など、様々な分類があります。

治療と関連分野

これらの硬組織疾患に対する治療法は、疾患の種類や進行度、患者さんの全身状態によって大きく異なります。虫歯であれば進行した部分を除去して詰め物やかぶせ物で修復する、骨折であれば手術で固定するなど、それぞれの病態に応じた専門的な処置が必要です。

硬組織疾患の研究や診療には、医学分野では整形外科学、形成外科学などが、歯学分野では保存修復学、口腔外科、口腔病理学などが深く関わっています。また、骨学、解剖学、病理学といった基礎医学・歯学分野も重要な役割を果たしています。

診断や治療にあたる専門職としては、医師、歯科医師のほか、病気の診断を助ける臨床検査技師、失われた歯の機能を回復させるための装置を作る歯科技工士など、多岐にわたる専門家が連携しています。軟組織や軟骨といった関連する組織の疾患についても、硬組織疾患と関連して理解されることがあります。

関連情報

硬組織疾患に関する研究や情報提供を行っている主な学術団体には、日本骨代謝学会、日本骨粗鬆症学会、日本骨形態計測学会、日本整形外科学会、日本歯科保存学会、日本解剖学会などがあります。

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