硬膜下血腫

硬膜下血腫（subdural hematoma：SDH）は、脳を保護する硬膜の内側と、その下にあるくも膜との間に血液が貯留する状態を指します。この状態は、頭部外傷によって架橋静脈が損傷し、血液が漏れ出すことで発生することが一般的です。しかし、外傷以外にも、抗凝血剤の使用、動脈瘤、脳腫瘍、腰椎穿刺後、または自然発生的に起こることもあります。特に、アルコール依存症の方はリスクが高いとされています。

症状としては、頭痛、錯乱、性格の変化、意識喪失などが挙げられます。これらの症状は、血腫の大きさや発生速度によって異なり、急激に症状が悪化するケースもあれば、徐々に進行するケースもあります。重症化すると、脳ヘルニアや発作といった合併症を引き起こし、生命に関わる危険性もあります。

診断は通常、CTスキャンによって行われます。CTスキャンにより、血腫の有無、大きさ、位置などを正確に把握することができます。また、MRIなどの画像検査が追加で必要となる場合もあります。

治療法は、血腫の大きさや症状の程度、発生からの時間によって異なります。出血量が多く、症状が重篤な場合は、緊急手術が必要となります。手術には、頭蓋骨の一部を切り開いて血腫を取り除く開頭術や、小さな穴を開けて血腫を排出する穿頭術があります。血腫が小さく症状が軽い場合は、手術をせずに経過観察を行うこともあります。

硬膜下血腫は、発症からの時間経過によって、急性、亜急性、慢性に分類されます。急性硬膜下血腫は、重度の頭部外傷患者の5～25％に発生し、非常に重篤な状態となる可能性が高いです。慢性硬膜下血腫は、年間10万人あたり約3人の割合で発症し、高齢者に多い傾向があります。小児の場合は、外傷が偶発的または意図的に発生する可能性があり、虐待の疑いも考慮する必要があります。

急性硬膜下血腫の予後は非常に悪く、症例の50～90％が死に至ります。一方、亜急性および慢性硬膜下血腫は、適切な治療を行えば良好な転帰が期待できます。いずれの場合も、早期の診断と適切な治療が重要となります。特に、高齢者の場合は、軽微な外傷でも発症するリスクがあるため注意が必要です。

硬膜下血腫の治療後の後遺症は、血腫の大きさや損傷した脳の部位によって異なります。運動機能障害、言語障害、認知機能障害などが残る可能性があります。リハビリテーションなどによる機能回復を試みる必要があります。また、再発の可能性もあるため、定期的な経過観察が重要となります。

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