神経原線維変化

神経原線維変化（NFT）とは

神経原線維変化（NFT：Neurofibrillary tangles）とは、神経細胞内にリン酸化されたタウタンパク質が異常に蓄積し、繊維状の構造を形成したものです。アルツハイマー病の主要な病理学的特徴の一つであり、その他、いくつかのタウオパチーや正常な加齢に伴っても観察されます。

NFTの構造

電子顕微鏡で観察すると、NFTは対になった螺旋状フィラメント（PHF：Paired helical filaments）が蓄積した構造をしています。PHFの主成分はリン酸化タウであり、ユビキチンも少量含まれます。PHFは直径約10nmで、約80nm周期でくびれと膨らみを繰り返す特徴的な構造をしています。アルツハイマー病患者の脳では、PHFに加えて直線状のフィラメント（SF：straight filaments）も検出されることがあります。

NFTの成熟段階

NFTは、プレタングル、成熟タングル、ゴーストタングルという段階を経て成熟します。

プレタングル: タウは細かい顆粒状として神経細胞の細胞質に存在します。この段階では、一般的にNFT検出に用いられるGallyas銀染色では染まりませんが、リン酸化タウを検出する抗体（AT8など）による免疫染色で可視化できます。
成熟タングル: 神経細胞内で太くねじれた繊維として観察されます。Gallyas銀染色などで黒く染まります。火炎状または球状の形態を示すことがあります。
ゴーストタングル: 神経細胞と核が崩壊し、リン酸化タウの繊維のみが残った状態です。

NFT Braak stage

NFTは脳内において特定のパターンで蓄積していくことが知られています。BraakらはNFTの蓄積パターンをステージングし、NFT Braak stageとして分類しました。NFT Braak stageは、アルツハイマー病の進行度合いを評価する上で重要な指標となります。

Stage I, II: 経嗅内野ステージ。前臨床段階で、臨床症状はほとんど見られません。
Stage III, IV: 辺縁系ステージ。認知機能障害が起こり始めます。
Stage V, VI: 新皮質ステージ。明らかな認知症を呈します。

ただし、NFTの蓄積パターンがBraak stageに従わないケースも存在します。

NFTが観察される病態

NFTは、以下の病態で観察されます。

正常加齢
アルツハイマー病
進行性核上性麻痺
大脳皮質基底核変性症
慢性外傷性脳症
神経原線維変化型老年期認知症（SD-NFT）
* 原発性年齢関連タウオパチー（PART）

まとめ

神経原線維変化（NFT）は、アルツハイマー病をはじめとする様々な神経変性疾患に関与する重要な病理学的変化です。NFTの蓄積様式や成熟段階を理解することは、これらの疾患の病態解明や診断、治療法の開発に繋がることが期待されます。

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