神郷亀塚古墳

神郷亀塚古墳：古代のロマンを秘めた前方後方墳

滋賀県東近江市にひっそりと佇む神郷亀塚古墳は、その特異な形状と歴史的背景から、多くの考古学者の注目を集める古墳です。一見すると小規模な丘にも見えるこの古墳は、日本最古級の前方後方墳であり、古代日本の政治情勢や文化交流を紐解く貴重な手がかりを秘めています。

古墳の概要

神郷亀塚古墳は、全長約36.5メートル、高さ約5.8メートルと推定される前方後方墳です。かつては前方後円墳と考えられていましたが、発掘調査の結果、前方部と後方部が方形である前方後方墳であることが判明しました。古墳の周囲には周濠が巡らされており、その規模は場所によって異なりますが、最大で約12.5メートルに達します。墳丘の西側には、さらに大規模な濠と竪穴建物跡が検出されており、居住域と聖域を区画する意図があったと考えられています。

築造年代と被葬者

古墳の埋葬部付近からは、弥生時代後期の土器が出土しており、3世紀前半（220年頃）に築造されたと推定されています。後方部からは、並列する2基の木槨（木で作られた玄室）が発見されており、有力者の夫妻が埋葬されていたと考えられています。

特徴的な構造

神郷亀塚古墳は、平地に高さ1メートルのテラスを構築し、その上にさらに4メートルの墳丘を築いた二段構造となっています。墳丘は、30層以上もの土を積み重ねて築かれており、当時の土木技術の高さを物語っています。

歴史的意義

神郷亀塚古墳は、畿内地方で主流であった円墳とは異なり、墳丘の構造や埋葬形式も大きく異なっています。このことから、当時大和政権に対抗していた狗奴国連合の有力者が埋葬されていた可能性が指摘されています。初期大和政権の勢力下にあった国々が前方後円墳を築造していたのに対し、神郷亀塚古墳の存在は、湖東地域がヤマト政権に組み込まれていく過程における指標として重要な意味を持っています。

保存状態と周辺環境

自然の丘などを利用せず、平地から盛り土のみで築いた古墳としては保存状態が良好であり、周濠だけが残っている同型墳の実姿を想像する際の貴重な資料となっています。古墳は乎加神社の社地にあり、静かで落ち着いた雰囲気が漂っています。

アクセス

• - JR琵琶湖線能登川駅より徒歩約30分
• - 能登川駅より近江鉄道バス神崎線または角能線に乗車、「佐生」停留所下車後、東へ徒歩約10分

神郷亀塚古墳は、古代日本の歴史と文化に触れることができる貴重な史跡です。ぜひ一度、足を運んでみてください。

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