福岡風太

福岡風太（ふくおか ふうた）氏は、本名を信博といい、1948年4月24日に大阪府で生を受け、2024年6月10日に76歳でその生涯を閉じました。彼は日本の音楽界において、プロデューサーそして舞台監督として多大な足跡を残しました。特に、大阪で毎年春に開催される野外コンサート「春一番」をプロデュースした人物として知られています。

福岡氏の音楽活動の原点は、大学時代に遡ります。1970年、アメリカで開催された大規模な音楽祭「ウッドストック・フェスティバル」の記録映画『ウッドストック/愛と平和と音楽の三日間』に触れ、強い感銘を受けました。同年には「大阪万博」で英語通訳として得た収入を資金に、天王寺野外音楽堂での「BE-IN LOVE-ROCK」をはじめ、「ロック合同葬儀」（大阪城公園）、「感電祭」（京都円山音楽堂）といった初期の野外コンサートを立て続けに企画・運営し、この分野での経験を重ねていきました。

彼のキャリアにおける最も重要な転換点となったのが、1971年のゴールデンウィークに大阪・天王寺公園で始まった「春一番」コンサートです。阿部登氏らと共にこのイベントを立ち上げた福岡氏は、フォーク、ロック、ジャズなど、音楽ジャンルに囚われない自由な姿勢を貫き、「春一番」を独自の文化空間へと育て上げました。これは、日本のイベント・プロデュース分野における先駆的な取り組みの一つとされています。

「春一番」での活動を通じて音楽業界に広い人脈を築いた福岡氏は、その後も様々なコンサートの制作やステージマネージャーとして活躍の場を広げていきます。また、自身もプレイヤーとしてステージに立ち、1971年の第3回全日本フォークジャンボリーで結成されたジャグ・バンド「武蔵野タンポポ団」には、高田渡、シバ、山本コウタロー、友部正人、中川イサトといった錚々たる顔ぶれと共に参加しました。

1979年に名古屋へ移住してからは、加藤登紀子、岡林信康、斉藤哲夫、いとうたかお、竹内まりやなど、ソロミュージシャンのバッキングバンドメンバーとして活動する傍ら、バンド「センチメンタル・シティ・ロマンス」のマネジメントを担当しました。1986年にバッキングバンドを離れた後は、大道具会社での仕事を通じてステージ裏方としての知識と技術を深く習得しました。

1987年末に東京へ拠点を移してからは、フリーランスの舞台監督として活動を開始。ペギー葉山、ジョニー吉長、大塚まさじ、金子マリ、近藤房之助、有山じゅんじ、上田正樹＆サウス・トゥ・サウス、加川良、忌野清志郎 with Booker T.&MGs、マリーン、ザ・タイマーズ、木村充揮BAND、中村あゆみ、ゴーバンズ、江口洋介、大野えり、北京一といった、多岐にわたるジャンルのアーティストたちのステージを裏方として支えました。

一時中断していた「春一番」コンサートは、1995年5月に復活を果たします。ミュージシャン、マネージャー、裏方としての多様な経験と、それを通じて築いた人脈は、復活後の「春一番」をさらに豊かなものとする大きな力となりました。2006年には、過去の貴重なライブ音源を収めたCDボックス『1972春一番』復刻版のプロデュースを手掛け、同年の7月からは音楽ユニット「ハンバート ハンバート」のマネジメントも担当しています。

晩年も、毎年の「春一番」コンサートの開催に加え、「高田渡生誕会 57」や新宿ロフトでの「春二番」ライブなど、精力的にコンサート制作や舞台監督として活動を続けました。日本のフォークやロックシーン、特に野外コンサート文化の発展において、福岡風太氏が果たした役割は非常に大きく、彼が関わった多くのミュージシャンやファンにその功績は深く記憶されています。

2024年6月10日、長年にわたる慢性気管支炎のため、大阪府吹田市の病院で逝去されました。

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