福島鋳郎

福島鑄郎：戦後雑誌・出版史研究のパイオニア

福島鑄郎（1936年1月1日-2006年6月）氏は、20世紀後半の日本の出版史研究において重要な役割を果たした研究者であり、熱心な収集家でした。栃木県生まれの氏は、本名・重信で、馬頭高等学校卒業後、古書店巡りの時間を確保するため、警備員として働きながら、雑誌収集と研究に情熱を注ぎました。

日販や藤沢市民病院などで警備員として勤務しながら、昼間の時間を活用して古書店を巡り、膨大な数の雑誌を収集。そのコレクションは、戦後日本の出版文化を深く理解する上で貴重な資料となりました。特に、プランゲ文庫の存在をいち早く日本に広く紹介したことは、氏の大きな功績の一つです。

1972年には、竹前栄治氏、天川晃氏とともに日本占領史研究会を設立し、日本の占領期研究にも大きく貢献しました。神奈川県藤沢市を拠点に活動し、2006年6月、白血病のため逝去しました。

受賞歴

氏の研究活動は高く評価され、数々の賞を受賞しています。主な受賞歴は以下の通りです。

1972年度 毎日出版文化賞 人文・社会部門（『戦後雑誌発掘』）
1982年度 日本出版学会奨励賞佳作（『大東亜戦争書誌』『戦時下の言論』）
1987年 尾崎秀樹記念・大衆文学研究賞 研究・考証部門（『雑誌で見る戦後史』）

これらの受賞は、氏の研究の質の高さと、戦後日本の出版文化研究への貢献を証明しています。

著作物

福島鑄郎氏は、単著、共著、編著など多数の著作を発表しました。その著作は、戦後日本の雑誌や出版文化、占領期の社会状況、三島由紀夫研究など、幅広い分野を網羅しています。代表的な著作物を以下に示します。

単著
『戦後雑誌発掘 -- 焦土時代の精神』
『新版 戦後雑誌発掘 -- 焦土時代の精神』
『三島由紀夫 -- 資料総集』
『増補改訂版 資料三島由紀夫』
『資料 三島由紀夫 新版』
『資料 三島由紀夫 増補改訂版』
『再訂資料 三島由紀夫』
『G.H.Q.東京占領地図』
『雑誌で見る戦後史』
『戦後雑誌の周辺』
『ポーランドから』

共著
『図説マッカーサー』
『回想の新生 -- ある戦後雑誌の軌跡』
『証言昭和二十年八月十五日 -- 敗戦下の日本人』
『ドキュメント 昭和二十年八月十五日 -- 占領下の日本人』
『記録自決と玉砕 -- 皇国に殉じた人々』
『ドキュメント自決と玉砕 -- 戦争下の日本人』
『自決と玉砕 -- 戦争下の日本人』
『シリーズ大東亜戦争下の記録 1 大東亜戦争書誌』
『復刻シリーズ大東亜戦争下の記録 1 大東亜戦争書誌』
『シリーズ大東亜戦争下の記録 2 戦時下の言論』
『復刻シリーズ大東亜戦争下の記録 2 戦時下の言論』
『マッカーサー -- 記録・戦後日本の原点』
『目撃者が語る昭和史 第8巻 8・15終戦 -- 各種和平工作から敗戦へ』
『占領期の女性雑誌シリーズ 働く婦人』

編著
『刊行雑誌分類別総目録 -- 昭和24年5月現在』
『GHQの組織と人事 -- 1946年9月現在』
『占領期の女性雑誌シリーズ 婦人』
『福島鑄郎所蔵占領期雑誌目録』

これらの著作は、戦後日本の社会や文化を多角的に理解する上で貴重な資料となっています。特に、占領期の雑誌を詳細に分析した著作は、当時の社会状況や人々の意識を知る上で重要な役割を果たしています。

研究分野と貢献

氏の研究は、戦後日本の出版文化史、特に雑誌史に焦点を当てており、占領期の出版物やGHQの活動にも深い関心を示していました。 プランゲ文庫の研究紹介や、多数の占領期雑誌の収集・分析を通して、戦後日本の社会構造や思想の変容を明らかにする上で大きな貢献をしました。

また、三島由紀夫に関する資料収集と研究にも力を注ぎ、関連著作を複数発表しています。

福島鑄郎氏の研究は、戦後日本の出版文化史研究に大きな足跡を残し、その功績は後世に語り継がれるべきでしょう。

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