福澤一太郎

福澤一太郎（ふくざわ いちたろう）

福澤一太郎は、文久3年（1863年）に福澤諭吉と錦夫妻の長男として、江戸の豊前中津藩中屋敷で生まれました。幼少期から両親の教育を受け、明治5年（1872年）には弟の捨次郎とともに英語を学び始めました。父・諭吉からの愛情深く育てられ、教訓集『ひゞのをしへ』を贈られるなど、温かい家庭環境で成長しました。一方で、繊細な性格から人との交流を苦手とする一面もあり、父から心配されることもありました。

教育と留学

一太郎は、捨次郎とともに東京大学予備門に入学しましたが、学風が合わず、体調を崩したこともあり退学。その後、慶應義塾に移り、明治16年（1883年）にはアメリカへ留学しました。しかし、留学先のオーバリン大学やコーネル大学での農学研究は自身の希望に合わず、明治19年（1886年）に退学。捨次郎とともにヨーロッパを旅行した後、明治21年（1888年）に帰国しました。

慶應義塾での活動

帰国後は慶應義塾で活動し、大学部設立後は文学科で英文学や歴史を教えました。その後、教壇から離れ、明治40年（1907年）に慶應義塾の社頭に就任し、亡くなるまで30年以上その職を務めました。大正11年（1922年）から大正12年（1923年）にかけては慶應義塾長も兼任しました。また、一時的に時事新報にも勤務しました。明治32年（1899年）には、父の教え子たちとともに『修身要領』の編纂にも携わりました。

私生活

一太郎は二度結婚しており、最初の妻とは約1年で離婚。その後、宇都宮三郎の義妹にあたる糸と再婚し、1男2女をもうけました。

家族

最初の妻：かつ
後妻：糸（大澤昌督の娘、大澤三之助の妹）
長女：ゆき（小山完吾の妻）
長男：八十吉
次女：八重（福澤駒吉の妻）

死去

昭和13年（1938年）6月4日に、74歳でこの世を去りました。

参考文献

西川俊作・西澤直子編『ふだん着の福澤諭吉』慶應義塾大学出版会（Keio UP選書）、1998年。
『人事興信録 第4版 下巻 復刻版』興信データ、2001年。
『人事興信録 第7版 下巻 復刻版』興信データ、2001年。
平山洋『福澤諭吉 文明の政治には六つの要訣あり』ミネルヴァ書房（ミネルヴァ日本評伝選）、2008年。
福沢諭吉事典編集委員会編『福澤諭吉事典』慶応義塾、2010年。
小室正紀編『近代日本と福澤諭吉』慶應義塾大学出版会、2013年。

登場作品

春の波涛（1985年、NHK大河ドラマ） 演：岡本富士太

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