私鉄沿線97分署

『私鉄沿線97分署』は、1984年 10月28日から1986年9月14日まで、テレビ朝日系列で毎週日曜20:00 - 20:54に全90話が放送された、国際放映制作の刑事ドラマです。第2回ATP賞ベスト20指定番組にも選ばれました。

ストーリー

物語の舞台は、東京都多摩地域西部の多摩川市。田園プラザに新設された第97分署は、庁舎の完成を待たずに開署を優先したため、空調もないプレハブの仮庁舎という状況でした。この97分署を舞台に、個性豊かな刑事たちが所轄内で起きる様々な事件を捜査します。

概要

前番組『西部警察シリーズ』の後を受け、渡哲也をメインキャストに据えた新たな刑事ドラマとして企画されました。『西部警察』と同様に石原プロモーションと広告代理店の東急エージェンシーが企画立案を行いましたが、制作は石原プロから国際放映へと引き継がれました。本作では、地域や日常に密着したドラマに重点が置かれ、警察機構の設定にもリアリティが追求されました。例えば、若い刑事の住居設定は、従来の刑事ドラマではアパートが一般的でしたが、本作では実際の独身刑事と同様に独身寮に住んでいるという設定が採用されました。また、拳銃の取り扱いについても、捜査中の刑事が常に携帯するのではなく、使用許可を得てから保管庫から取り出すという、現実に即した描写がなされています。

扱う事件も、いたずら電話をきっかけとする嫌がらせや万引き・窃盗など、所轄署が単独で取り扱うようなものが中心です。タイトルロゴやコメディタッチのオープニング、ユニークなサブタイトルなど、従来の刑事ドラマの雰囲気を払拭する明朗なカラーが打ち出されました。一方で、殺人事件や米軍基地からの拳銃横流し密売事件など、大規模な犯罪も描かれています。放映期間中にメンバーチェンジはありましたが、前番組でよく見られた「殉職」という形での退場はなく、転属や転職が理由とされています。97分署は他の署に比べて検挙率が低く、その人情に偏った捜査方針が問題視されているという設定も加えられました。

制作には石原プロの専属スタッフが多数参加しており、覆面パトカーなどの車両も前番組から引き続き使用されました。また、早見優や野村将希など、石原プロと関係の深いサンミュージック所属のタレントや俳優も多数出演しています。

ロケーション

撮影は、東急エージェンシーが企画に関わっていた関係から、東急電鉄沿線である神奈川県横浜市緑区（現・青葉区）のたまプラーザ、あざみ野近辺で行われました。撮影当時、これらの地域は新興住宅街で空き地が多く見られましたが、放送から40年近く経った2020年代現在は都市化が進み、放送当時の面影はあまり残っていません。撮影用の97分署プレハブ庁舎は、東急田園都市線たまプラーザ駅南口の駐車場に設置されました。第1シーズンのオープニングには、たまプラーザ駅前の東急百貨店近辺の風景が、第2シーズンでは住宅展示場の看板が映っています。

第1シーズンのエンディング映像は、東急田園都市線二子玉川園駅（現：二子玉川駅）から二子新地駅にかけての前面展望がフィーチャーされており、初代東急6000系電車や営団（現：東京メトロ）半蔵門線8000系電車が映っています。

登場人物・出演者

以下、特記のない者は全編にわたって出演しています。

97分署メンバー

捜査課

奈良龍治 (ならりゅうじ)：鹿賀丈史
33歳。現場でのリーダー的存在。刑事歴12年の警部補。
片山大 (かたやまひろし)：時任三郎（第1話 - 第26話）
25歳。愛称はヒロシ。巡査長。血気盛んな新米刑事。
本多杏子 (ほんだきょうこ)：坂口良子（第1話 - 第30話）
29歳。巡査長。勝ち気な性格。
松元良平 (まつもとりょうへい)：小西博之
26歳。明るく単純でお調子者の三枚目。巡査長。
倉田徳夫 (くらたのりお)：高橋長英（第1話 - 第62話）
43歳。愛称「クラさん」。警部補。経験豊富なベテラン刑事。
九十九圭介 (つくもけいすけ)：新沼謙治（第27話 - 第67話）
29歳。巡査長。東北訛りがあり、のんびりとした性格。
仁科順子 (にしなじゅんこ)：斉藤慶子（第31話 - 第90話）
24歳。巡査長。活発で男勝りな性格。
田島修 (たじまおさむ)：四方堂亘（第31話 - 第90話）
23歳。巡査長。松元を目標にしている。
橘礼子 (たちばなれいこ)：山口果林（第60話 - 第90話）
36歳。警部補。シビアな性格の敏腕刑事。
本城功 (ほんじょういさお)：古尾谷雅人（第68話 - 第90話）
28歳。巡査長。口数が少なく、不器用だが心優しい。

滝村兼三(たきむらけんぞう)：長門裕之
50歳。捜査課長、警部。「デカ殺しの滝村」の異名を持つ。

検視官室

榊俊作 (さかきしゅんさく)：渡哲也
42歳。医師免許を持つ警察官（検視官）、警視。温厚で刑事たちの相談役。
相原恵子 (あいはらけいこ)：早見優（第1話 - 第15話）
19歳。少年課勤務の巡査。榊検視官の助手。
新庄めぐみ (しんじょうめぐみ)：原口弥生（第23話 - 第50話）
20歳。巡査。検視官助手。
清水あゆみ (しみずあゆみ)：北原佐和子（第51話 - 第90話）
20歳。巡査。榊検視官の助手。

交通課

三木敦史 (みきあつし)：野村将希（第1話 - 第67話、第86話、第90話）
29歳。巡査長。白バイ隊員。
谷口夕介 (たにぐちゆうすけ)：柄沢次郎（第1話 - 第26話）
22歳。白バイ隊員。巡査。
望月亮 (もちづきりょう)：古城裕章（第1話 - 第67話、第86話、第90話）
27歳。白バイ隊員。巡査。

警務課

丸岡吾一 (まるおかごいち)：武藤章生
48歳。課長、警部。通称「おとぼけの丸さん」。

その他

山崎司 (やまざきつかさ)：池部良
53歳。97分署署長、警視。

ナレーション：田中信夫

スタッフ

プロデューサー：稲垣健司（テレビ朝日）、菅原郷史、森川一雄（国際放映）
音楽：小川よしあき（第1シーズン）、加瀬邦彦（第2シーズン以降）
撮影：宗田喜久松、内田清美、増島勝彦
照明：椎野茂
録音：佐藤泰博、塩原政勝
美術：小林正義、朝生治男
編集：原桂一
助監督：森清和夫、崎田憲一、大久保直実
整音：黒丸治夫
選曲：長沼寛
記録：桧垣久恵、水平冨喜子、内野敬子、安倍伸子
効果：小島良雄（東洋音響）
プロデューサー補：[山田耕大]
音楽コーディネーター：田村進一朗
擬斗：高倉英二
制作主任：古賀正行、福塚孝哉、藪下隆

テーマ曲

第1シーズン（第1話 - 第26話）：松山千春
OP：「男と女」
ED：「粉雪」
第2シーズン（第27話 - 第67話）：ザ・ワイルドワンズ
OP：「ハート燃えて愛になれ」
ED：「涙色のイヤリング」
第3シーズン（第68話 - 第90話）：ブービーズ
OP：「当日・消印・有効」
ED：「Because I love you」

映像ソフト化

私鉄沿線97分署コレクターズDVD（全4巻）
2021年7月30日から10月29日にかけて、「昭和の名作ライブラリー」シリーズの第90集として全話収録のDVDがリリースされました。

ネット局

テレビ朝日（制作局）：日曜 20:00 - 20:54
その他、系列局や独立局で放送。

私鉄沿線97分署