秋丸機関

秋丸機関の概要

1939年9月、国際情勢が変化していた中、日本の陸軍省内に設立された「陸軍省戦争経済研究班」こと秋丸機関は、経済面からの総力戦を研究するために設置されました。この機関は、ノモンハン事件や第二次世界大戦の勃発が背景にあり、特に戦局における経済戦力の分析に力を入れました。陸軍省軍務局の岩畔豪雄大佐の発案により設立され、目立たない形で活動を行うため「陸軍省主計課別班」という名称を使用しました。

特に、満洲国の経済建設に貢献した秋丸次朗中佐が関東軍から呼び戻され、機関の指揮を取ることになったことで、「秋丸機関」という名前がつけられました。

機関の活動

秋丸機関は、潜在的な敵国や同盟国の経済戦力を詳細に分析し、その最弱点を把握することを目指しました。また、日本自身の経済戦力の持続力を見極めるために、経済学者や各省の若手官僚をはじめとする人材を集め、十数人から数十人で構成される班をいくつも設置しました。有沢広巳を主査とする英米班、武村忠雄の独伊班、中山伊知郎の日本班など、多岐にわたる班が設立され、全体で数百名に及ぶ人材が集結しました。

利用可能だった潤沢な予算を活かし、各国に関する約9000点の資料を収集・分析しました。その成果として、各国の経済抗戦力を判断する資料や調査報告書を作成しました。具体的には「独逸経済抗戦力調査」や「英米合作經濟抗戰力調査」など、多くの報告書が発表され、現在も多くの資料が残されています。

重要な報告

秋丸機関は、1941年7月にこれらの研究成果を陸軍上層部に報告しました。この内容では、日本が開戦後の二年間で国力を高め、攻撃の機会を窺いながら同時に敵国の経済的弱点を突く戦略が提起されました。具体的には、英国の植民地への攻撃や制海権の確保、潜水艦による海上交通の遮断が重要とされ、特に英米の抗戦力には悲観的な見解を示しました。

また、秋丸機関の議論は当時の政策形成にも影響を与え、さまざまな戦争指導方針の策定に寄与しました。たとえば、持久戦へ身を投じる日本がどのようにして経済的に戦うかについての重要な視点が提供されました。

結論と解散

一方、秋丸機関の結論はしばしば暗示的であり、国策と齟齬をきたすことがあったため、末期には報告書の焼却が命じられたとの話も残されています。具体的な資料に関しては、その一部が後に発見され、当初の見解がいかに国の方針と相反していたかが伺えます。1942年12月には秋丸機関が解散し、その機能は総力戦研究所に引き継がれました。

秋丸機関は、その存在が明治以来の戦争と経済の関係を再考する重要な契機となり、また日本の経済学者たちが戦争研究において果たした役割を物語るものでもありました。この研究機関を通じて、戦時下における経済戦略がどのように考えられていたか、その裏側には多くの複雑な戦略家たちの思考が存在していたと言えるでしょう。

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