秋定嘉和

秋定嘉和：日本の差別問題研究におけるパイオニア

秋定嘉和氏（1934年3月16日-2021年8月9日）は、日本の差別問題研究、とりわけ部落問題研究において卓越した功績を残した研究者です。兵庫県出身の秋定氏は、立命館大学文学部を卒業後、同大学院修士課程を修了。その後、兵庫県立尼崎工業高等学校教諭を経て、京都大学人文科学研究所や同志社大学人文科学研究所で共同研究に参加するなど、研究活動の幅を広げました。

学術研究への貢献に加え、秋定氏は教育者としても重要な役割を果たしました。池坊短期大学教授としての教育活動は、多くの学生に人権意識の涵養に貢献したと言えるでしょう。また、大阪人権博物館館長や京都部落問題研究資料センター所長を歴任した経験から、実践的な人権教育にも尽力されたことが伺えます。2021年8月9日、87歳でその生涯を閉じました。

研究テーマと業績

秋定嘉和氏の研究は主に、近代日本における人権問題、特に部落問題に焦点を当てています。同氏は、長年にわたる研究活動を通して、数多くの貴重な著作を発表しました。代表的な著書には、『近代日本人権の歴史 主として部落問題を中心に』（明石書店、1992年）、『近代と被差別部落』（部落解放研究所、1993年）、『部落の歴史 近代』（部落解放・人権研究所、2004年）、『近代日本の水平運動と融和運動』（部落解放・人権研究所、2006年）などがあります。これらの著作は、部落問題に関する歴史的事実を詳細に分析し、現代社会における課題を浮き彫りにした重要な文献です。

さらに、秋定氏は多くの共編著にも携わっています。『セミナー日本と朝鮮の歴史』（井上秀雄、長正統共編著、東出版、1972年）、『部落問題・水平運動資料集成』（渡部徹共編、三一書房、1973-78年）、『日本庶民生活史料集成』（原田伴彦共編、三一書房、1980年）、『近代部落史資料集成』（大串夏身共編、三一書房、1985-86年）、『部落史研究ハンドブック』（小林茂共編、雄山閣出版、1989年）、『近代庶民生活誌』（南博、林喜代弘共編、三一書房、1998年）、『近代日本と水平社』（朝治武共編、部落解放・人権研究所、2002年）など、多岐にわたるテーマを扱った書籍を世に送り出しました。これらの共編著は、部落問題研究の幅を広げ、関連資料の体系的な整理に大きく貢献しています。

秋定嘉和氏の研究が持つ意義

秋定嘉和氏の研究は、部落問題に関する歴史的、社会的な理解を深める上で非常に重要な役割を果たしました。氏の著作は、単なる学術的な成果にとどまらず、部落差別問題の解決に向けた社会的な議論を促進する上で重要な役割を果たしたと言えます。特に、歴史的事実を丁寧に検証し、客観的な視点から問題点を明らかにした姿勢は、高く評価されています。

秋定嘉和氏の功績は、単なる研究活動にとどまらず、人権教育や啓発活動への貢献にも及んでいます。大阪人権博物館館長や京都部落問題研究資料センター所長としての活動を通して、多くの人々に差別問題への理解を促し、社会全体の意識改革に貢献しました。

秋定嘉和氏の研究と活動は、日本の差別問題研究に大きな足跡を残し、その思想と業績は、現代社会における人権尊重と平等な社会の実現に向けた取り組みを支え続けるでしょう。

もう一度検索