秋山実 (ギタリスト)

秋山 実（あきやま みのる）は、1936年3月30日に岩手県花巻市で生まれ、2000年8月18日にその生涯を閉じた、日本の著名なギタリストです。

昭和の歌謡曲や演歌の全盛期において、秋山氏は伴奏ギタリストとして欠かせない存在でした。多くの歌手のレコーディングに参加し、その温かくも力強いギター演奏は、数々のヒット曲に深みを与えました。テレビの音楽番組やコンサートなど、多岐にわたる音楽ステージでも活躍しました。

キャリアの初期において、秋山氏はレコード会社の専属ギタリストとして活動を開始しました。1963年に設立されたばかりの日本クラウンレコードに約1年間所属した後、活動の場を日本ビクターに移し、ここでも専属契約を結びました。その後はフリーランスのギタリストとして、幅広い活動を展開することとなります。

1960年代、国民的な音楽番組であるNHK紅白歌合戦のバックバンドを務めていた時期がありました。しかし、共演するバンドメンバーの出演料が不当に低い現状に対し、秋山氏は公共放送に向けて改善を求める抗議を行いました。この行動の結果、翌年以降は番組からの出演依頼が途絶えるという皮肉な展開を迎えます。それでも彼の技術への信頼は揺るぎなく、1990年代には森進一や島倉千代子といった大物歌手たちのギター伴奏収録に再び招かれるようになります。また、『ミュージックフェア』や『演歌の花道』など、テレビの主要な音楽番組でもバックバンドの一員として度々その姿を見せました。

フリーランスとして活動する傍ら、ソロ名義での作品も発表しています。1965年から1970年にかけては、日本ビクターの企画のもと、「ヴィンセント・ロドリゲス」や「アンリ・ラモー」といった異なった名義で2枚のソロLPレコードをリリースしました。また、当時流行していた楽曲をアンサンブル形式にアレンジして演奏したLP『太陽がいっぱい』や『カレッジポップス』も制作するなど、多様な音楽性を示しました。

彼のキャリアにおける特筆すべき出来事として、美空ひばりの晩年の活動への参加が挙げられます。1988年の東京ドームでの「不死鳥コンサート」以降に行われた、ひばりにとって最後のコンサートツアーにおいて、秋山氏はそのバックバンドの一員として伴奏を務めました。また、一時引退していた都はるみが歌手活動を再開した際には、1990年の復帰CD『浮草ぐらし/ギターとはるみ』のレコーディングに参加。さらに、都はるみのバックバンド「閻魔堂」のメンバーとして、コンサートツアーにも同行しました。これらのエピソードは、秋山氏がいかに多くのトップアーティストから厚い信頼を得ていたかを物語っています。

現場では、その演奏技術と温厚な人柄から、親しみを込めて「シーラカンス」と呼ばれることもあったといいます。1996年、60歳を迎えたことを機に、第一線での商業的な活動からは身を引きました。しかし、その後も音楽活動をやめることはなく、2000年に膵臓がんで病床に伏すまでの間、チャリティーコンサートやボランティアとしてのギター演奏を精力的に行い、音楽を通じて社会に貢献し続けました。

秋山実氏が伴奏を務めた代表的な楽曲には、日本の歌謡史に燦然と輝く名曲が数多く含まれています。

「星のフラメンコ」（西郷輝彦）
「せんせい」（森昌子）
「花と蝶」（森進一）
「伊勢佐木町ブルース」「気まぐれブルース」「池袋の夜」（青江三奈）
「函館の女」「兄弟仁義」（北島三郎）
「裏町酒場」「おまえに惚れた」「しのぶ」「哀愁出船」「愛燦燦」（美空ひばり）
「鳳仙花」（島倉千代子）
「さざんかの宿」（大川栄策）
「大阪しぐれ」「浪速恋しぐれ」「夫婦坂」「ふたりの大阪」（都はるみ）
TVドラマ『人間の條件』(1962) テーマ曲

秋山実氏は、表舞台に立つ歌手たちを卓越したギター演奏で支え、昭和の歌謡曲・演歌のサウンドを形作った功労者の一人です。彼の残した音は、今もなお多くの人々に愛され続けています。

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