秋月種茂

秋月種茂は、江戸時代中期から後期にかけて活躍した大名であり、日向国高鍋藩の第7代藩主として知られています。彼は、高鍋藩の全盛期を築いた名君とされ、その手腕は高く評価されています。剃髪後の号は鶴山といい、世界的に名君として知られる上杉鷹山を弟に持ちます。上杉鷹山は、兄である種茂の実力を自分以上であると認めていました。

種茂は寛保3年（1744年）、第6代藩主・秋月種美の長男として誕生しました。宝暦6年（1756年）には、9代将軍・徳川家重に謁見し、宝暦7年（1758年）には従五位下・山城守に叙任されました。宝暦10年（1760年）に父・種美の隠居に伴い家督を継ぎ、高鍋藩の藩主となりました。翌年の宝暦11年（1761年）には、初めてお国入りを許可されています。

藩主となった種茂は、ただちに藩政改革に着手しました。彼の改革は人材育成を重視しており、安永7年（1778年）には藩校明倫堂を創設し、「教育の高鍋藩」という礎を築き上げました。明倫堂は、武士だけでなく民百姓にも門戸を開き、身分に関わらず教育を受けられるようにしました。この明倫堂からは、明治時代に活躍する多くの人材（三好退蔵、秋月左都夫、石井十次など）が輩出されました。

種茂は教育だけでなく、民の福祉にも力を注ぎました。大阪から優秀な産婆を招き、安全な出産方法を藩内に普及させるとともに、日本で初めて子供手当を支給するなど、現代でいう児童福祉にも心を配りました。また、財政再建政策も積極的に行い、藩の財政基盤を安定させました。

弟である上杉鷹山は、「兄は僻遠の藩主であるため、その名が世に知られていないが、もし兄が（私に代わって）米沢藩主になっていたならば、米沢は今よりもずっと繁栄していただろう」と述べ、種茂の政治手腕を高く評価しています。天明8年（1788年）には家督を長男の種徳に譲り隠居しましたが、その後も藩政の実権を握り続けました。

文政2年（1819年）11月6日、種茂は77歳でその生涯を閉じました。

系譜

父母
父: 秋月種美
母: 春姫（黒田長貞の次女）

正室
盈子（松平明矩の娘）

子女
長男: 秋月種徳（生母：盈子）
次男: 黒田長舒（生母：盈子）
五男: 秋月種備（生母：盈子）
娘: ケイ（山田重礼室）
娘: チセ（中村道義室）
その他: 秋月岩次郎（早世）、秋月常三郎（早世）、秋月松五郎（早世）

もう一度検索