秋永月三

秋永月三：日本の国力調査に奔走した陸軍軍人

秋永月三（あきなが つきぞう）は、1893年（明治26年）に大分県で生まれ、1949年（昭和24年）に没した、大日本帝国陸軍の軍人です。最終階級は陸軍中将で、内閣綜合計画局長官を務めました。

生い立ちと初期の軍歴

秋永は、村長を務めていた秋永澄蔵の三男として生まれました。中津中学校（現在の大分県立中津南高等学校）を経て、1915年（大正4年）に陸軍士官学校（27期）を卒業し、砲兵少尉に任官されました。その後、陸軍砲工学校高等科、陸軍大学校（36期）を卒業し、砲兵部隊の中隊長などを歴任しました。1927年（昭和2年）からは、陸軍派遣学生として東京帝国大学経済学部で聴講し、経済に関する知識を深めました。

航空兵への転科と昇進

秋永は、陸軍省整備局、軍務局、関東軍参謀などを経て、1935年（昭和10年）に砲兵中佐に昇進。その後、第18師団参謀を務めた後、1937年（昭和12年）に航空兵科へ転科し、航空兵中佐となりました。1938年（昭和13年）には航空兵大佐に進み、航空畑でのキャリアを積んでいきます。

企画院での活動と太平洋戦争

1938年（昭和13年）から、商工省臨時物資調整局、企画院に籍を置き、1941年（昭和16年）には陸軍少将へ昇進、企画院第一部長に就任しました。太平洋戦争中には、第17軍参謀長としてブーゲンビル島の守備を担当しましたが、体調を崩し帰国、入院します。1944年（昭和19年）には陸軍中将に進み、軍需官、中国軍需監理部長を歴任しました。

内閣綜合計画局長官として国力調査を主導

終戦間際の1945年（昭和20年）4月、秋永は鈴木貫太郎首相の意向を受けた内閣書記官長・迫水久常（企画院時代の部下）の推薦により、内閣綜合計画局長官に就任しました。秋永は、日本の真の国力を把握するため、綜合計画局で徹底的な調査を行い、その結果を『国力の現状』としてまとめ、最高戦争指導会議に提出しました。この調査は、当時の日本の国力が疲弊していたことを示すものであり、終戦への判断を促す一因になったとされています。

戦後と晩年

終戦後の1947年（昭和22年）に公職追放仮指定を受け、その後、三光物産社長を務めました。秋永は、軍人としてだけでなく、企画院での活動や国力調査を通して、日本の国家運営に深く関わった人物でした。

秋永月三に関する考察

秋永月三は、陸軍軍人としてだけでなく、経済や政策にも精通した人物でした。東京帝国大学での聴講経験は、彼の多角的な視点を養う上で重要な役割を果たしたと考えられます。また、企画院での活動や内閣綜合計画局長官としての国力調査は、日本の国家運営における意思決定に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

彼の活動は、日本の近代史を理解する上で欠かせない要素であり、特に太平洋戦争末期の日本の状況を考える上で、重要な視点を提供してくれます。

参考文献

秦郁彦編『日本陸海軍総合事典』第2版、東京大学出版会、2005年。
福川秀樹『日本陸軍将官辞典』芙蓉書房出版、2001年。
外山操編『陸海軍将官人事総覧 陸軍篇』芙蓉書房出版、1981年。
迫水久常『機関銃下の首相官邸』筑摩書房〈ちくま学芸文庫〉、2011年。
* Tomohide Ito: Militarismus des Zivilen in Japan 1937–1940: Diskurse und ihre Auswirkungen auf politische Entscheidungsprozesse, (Reihe zur Geschichte Asiens; Bd. 19), München: Iudicium Verlag 2019（特にS. 200-205で秋永の思想を分析）

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