秋田市記念市民歌

「秋田市記念市民歌」（あきたしきねんしみんか）は、秋田県秋田市によって制定された市民歌です。1979年（昭和54年）に市制90周年を記念して作られました。作詞は黒木玲子、作曲は藤原政幸が手掛けています。

秋田市では、1928年（昭和3年）に最初の市民歌が制定されて以降、時代の変遷と共に市民歌の改訂を繰り返し、本歌は5代目に当たります。これは全国的に見ても最多の事例となっています。市役所では、これらの旧市民歌は「廃止されたものではなく、周年行事などで秋田市の足跡として歌い継がれている」と説明しています。

歴代の秋田市民歌は以下の通りです。

初代：1928年（昭和3年）制定「秋田市民歌」。作詞：土井晩翠、作曲：山田耕筰。
2代目：1949年（昭和24年）制定「秋田市民歌」。作詞：花岡としみ、作曲：露木次男。
3代目：1952年（昭和27年）制定「秋田市民歌」。作詞：大木惇夫、作曲：深井史郎。
4代目：1960年（昭和35年）制定「秋田市民のうた」。作詞：秋田市民のうた作詞委員会、作曲：秋田市民のうた作曲委員会。

制定の経緯

戦後、市民歌の変更が度々行われた後、1960年に制定された4代目の「秋田市民のうた」で一旦落ち着きました。しかし、1970年代になると、歌詞中の八橋油田に関する表現が、実際の油井の閉鎖状況と合わなくなり、市民の間で疑問視されるようになります。これを受け、市は1976年（昭和51年）に「秋田市民の歌修正委員会」を設置し、市民アンケートを実施しました。

アンケートでは歌詞修正に賛成が75%を占めたものの、「制定時の歴史を尊重すべき」「時代の移り変わりを示すものとして歴史が感じられる」「慣れ親しんだ歌詞を変える必要はない」といった反対意見も根強くありました。市側は「多数決で決めるものではない」とし、将来的な再検討を示唆することで結論を保留しました。

その後、1979年の市制90周年を控えて記念事業プロジェクトチームが発足した際に、この市民歌の問題が再び議論の対象となりました。現状維持、歌詞修正、新市民歌制定の三案が出ましたが、最終的に新しい市民歌を制定する方針が採用され、現在の「秋田市記念市民歌」が作られることになったのです。

1978年末に記念市民歌制定委員会が立ち上げられ、翌年1月から歌詞の懸賞募集が行われました。173名から191篇の応募があり、最終審査では4作品が候補に残りました。秋田放送のアナウンサーによる朗読を経て慎重な討議が行われた結果、市内に住む主婦、黒木玲子氏の作品が入選しました。

続いて作曲部門の募集が行われましたが、こちらは予想をはるかに超える363篇もの応募がありました。プロの音楽家だけでなく、趣味で作曲する人々からの応募も多く、特に注目を集めたのは、大工の藤原政幸氏の作品です。彼は長女の小学校入学記念に購入したばかりのオルガンで作曲したといい、この作品が採用されました。こうして、作詞・作曲ともに一般市民の応募作によって新しい市民歌が完成し、1979年 4月20日に制定が告示されました。

発表後

新市民歌の完成に際して、当時の関係者からは期待の言葉が寄せられました。

制定から時を経て、2009年（平成21年）7月12日に行われた市制120周年記念式典では、初代から5代目までの歴代市民歌を繋いだメドレーが披露されるなど、秋田市の歩みを彩る歌として扱われています。

秋田市に関連する楽曲としては、市民歌以外にも様々な歌があります。4代目市民歌と同時に選定された新民謡「秋田市民小唄」（作詞：田沢武男、作曲：小松平五郎）、市制80周年を記念して1969年（昭和44年）に作られた「秋田市賛歌」（作詞：久保欽一、作曲：小野崎孝輔）や「秋田市民音頭」（作詞：佐々木令温、作曲：鈴木富雄）、市制100周年の1988年（昭和63年）に発表された記念歌「秋田・ロマンス」（作詞：吉田慶嗣、補作：東海林良、作曲：小林亜星）などが挙げられます。

旧町民歌

2005年（平成17年）に秋田市に編入合併された、河辺郡河辺町と雄和町の旧町民歌についても触れておきます。合併協議会では、これらの歌を「地域の歌」として継承していくことが合意されており、一部は秋田市の公式サイトでも歴代市民歌と共に紹介されています。

河辺町

河辺町には、「河辺町町民歌」（かわべまちちょうみんか）がありました。これは1965年（昭和40年）11月2日に制定されたもので、作詞は竹内瑛二郎、作曲は大山会三郎です。歌詞と楽譜は『ふるさとは歌われているか』という書籍に掲載されており、秋田市の公式サイトでも紹介されています。

また、1990年（平成2年）には町のイメージソングとして「せせらぎの町へ〜岩見川旅情〜」が作成されました。作詞：石野ひさし、補作：大友康二、作曲：井上かつお、編曲：島津秀雄で、ダ・カーポが歌唱しCD化もされています。こちらは秋田市の公式サイトでは紹介されていません。

雄和町

雄和町には、「雄和町民歌」（ゆうわちょうみんか）があります。これは、大正寺村、戸米川村、種平村の合併による雄和村発足に伴い、1958年（昭和33年）7月6日に「雄和村民歌」として制定され、町制施行後に改題されたものです。作詞は竹内瑛二郎、作曲は小野崎晋三です。秋田市の公式サイトでは、この歌のみが雄和町の旧町民歌として紹介されています。

さらに、1972年（昭和47年）4月1日の町制施行を記念して、同年6月11日には「雄和町の歌」（ゆうわまちのうた）が制定されました。こちらは安藤五百枝と竹内瑛二郎が共同で作詞し、大山会三郎が作曲しました。『ふるさとは歌われているか』にはこの「雄和町の歌」が掲載されていますが、秋田市の公式サイトでは紹介されていません。このように、雄和町には制定経緯や紹介状況が異なる複数の歌が存在しました。

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