秩父丸

秩父丸（ちちぶまる）

秩父丸は、日本郵船によって運行されていた貨客船であり、1930年に就航し「太平洋の女王」とも称された。最初の名前はいわゆる「秩父」神社に由来し、1939年には「鎌倉丸」へと改名され、その後は太平洋戦争中に日本海軍に徴用された。1939年の改名背景には、ローマ字表記の変更に関する政治的な事情も耳にすることがある。特に「Chichibu-Maru」が「Titibu-Maru」となることで、英語の俗語との誤解を避けるためだ。これにより、船内では鎌倉宮の神霊が祀られることになった。

概要と建造の経緯

1930年、秩父丸は日本郵船の浅間丸型客船の1隻としてデビューしました。姉妹船としては浅間丸と龍田丸が存在し、いずれも北米航路に従事していました。これらの船は「太平洋の女王」として名声を博しました。この船は、豪華客船としての地位を確立し、近代的なデザインとともに多くの注目を浴びました。

それ以前、1920年代に日本郵船は北米向けの航路を刷新するために、新型船の建造を計画していました。秩父丸はその計画の中で重要な役割を果たしましたが、経済状況や企業の財政難から建造先が変更され、横浜船渠での建造になりました。ここでは、阿部吾一が監督となり、ヨーロッパから技術者を招くなどして技術を磨き、適切な材料を調達しました。

秩父丸は1929年に進水式を行い、その後も試運転を重ねて1930年に竣工しました。総工費は1193万円に達し、その規模や内装デザインも当時の他の客船とは一線を画しました。この船の最大の特徴は、姉妹船と違いデンマーク製の高性能ディーゼルエンジンを搭載した点です。

太平洋横断航路への就航と戦時中の活動

1930年4月、秩父丸は横浜とサンフランシスコを結ぶ航路に就航し、6600キロメートル（5,500マイル）を12日間で走破しました。太平洋を横断するのは当時画期的なもので、他国の大型客船に比べてもその航海速度が注目されました。特に、1938年には100回の太平洋横断を達成し、社史に名を刻むことになります。

しかし、戦争の影響により1941年に日本海軍に徴用され、特設運送船として南方地域へ物資を輸送する任務に従事しました。自衛のための武装や聴音機を装備しながらも、独自に航海を続けました。

沈没の運命

1943年、秩父丸はボルネオ島への航行中に、アメリカ海軍の潜水艦によって攻撃を受け沈没しました。この日は、乗客2234名と兵員500名を乗せて出航し、最後は急速に浸水し、わずか数分で沈没することとなります。生存者はわずか465名で、多くの人が行方不明となりました。この事件は多くの犠牲を出し、当時の海上輸送の危険性を痛感させるものでした。

結論

秩父丸は、日本の海運史において重要な位置を占めていました。その豪華な内装、技術、そして悲劇の最期が交錯したこの船の歴史は、多くの人々に感銘を与えてきました。さらには、日本海軍に徴用され、戦争に巻き込まれたという宿命もまた、歴史の一部として語り継がれています。

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