称名寺 (南砺市)

富山県南砺市大島地区に位置する称名寺は、真宗大谷派に属する歴史ある寺院です。五箇山地域における浄土真宗の広まりとともに歩み、特に加賀国（現在の石川県）の吉藤専光寺との関係において重要な役割を果たしてきました。また、寺には南砺市の指定文化財である木造親鸞聖人座像が安置されており、その歴史的・美術的価値が注目されています。

五箇山地域に浄土真宗が根付いたのは15世紀後半のこととされ、当初は越前国（現福井県）の和田本覚寺が布教の中心を担いました。この時期、本願寺五代綽如の系統が北陸一帯で勢力を伸ばしており、五箇山の西部は和田本覚寺の影響下にありました。それに対し、五箇山の東部には金沢の吉藤専光寺が進出し、称名寺の前身である嶋村道場もまた、この専光寺の傘下にある道場として出発しました。

嶋村道場の開祖は道場坊の八郎左衛門という人物と伝えられています。寺の記録によれば、彼は美濃国池田郷の領主から逃れてきた者の子孫であったとされます。天文21年（1552年）に作成された五箇山十日講起請文には「嶋八郎左衛門尉」の名が署名されており、後世の注釈はこの人物が嶋村道場の祖先であるとしています。戦国時代には越中一向一揆に加わっていたとされ、一揆で実際に使用されたという伝承を持つ旗竿が現在も残されています。

天正10年（1582年）には、織田信長に対する徹底抗戦を主張していた本願寺の教如（後の東本願寺創設者）が一時的に五箇山を訪れています。称名寺に伝わる「御真影様由来」という記録には、嶋村道場の池田八郎左衛門が教如の五箇山への下向を勧めたと記されています。五箇山における専光寺配下の道場の中でも、利賀谷坂上にあった西勝寺は特に有力で、後に独立した寺院としての地位を得ました。嶋村道場は、この西勝寺の末寺となった時期がありました。

江戸時代中期に入ると、嶋村道場は西勝寺の傘下から離れるかどうかを巡って議論が起こりました。その結果、安永7年（1778年）に道場は二つに分かれることになります。一方の派は、西勝寺の下を離れて再び専光寺の直属となり、従来の道場を継承しました。これが現在の称名寺です。もう一方の派は、引き続き西勝寺の下に留まることを選択し、新たに道場を設けて現在の西方寺となりました。

この分派の際に、称名寺には蓮如上人が九十歳の親鸞聖人の姿を彫ったと伝えられる木造の御像が収蔵されることになりました。この像は、本山の本願寺から金沢の尾山御坊、そして専光寺へと伝えられてきたもので、道場の東西分裂を機に称名寺で大切に守られるようになったのです。その後も、一時的に御真影が専光寺に里帰りすることがありましたが、称名寺に戻ってくる際には、村人たちが獅子舞を披露しながら峠まで出迎えに行ったという逸話が残されており、像への信仰の深さがうかがえます。

明治時代に入り、嶋村道場は専光寺下の道場という位置づけから、正式な寺院へと昇格を目指します。道場坊の子であった池田昇教が、まず奈良県生駒郡片桐村にあった称名寺の住職となります。そして明治36年（1903年）11月21日、この奈良の称名寺を平村大島に移転するという形で、嶋村道場は新たに「称名寺」と称するようになりました。

称名寺が所蔵する木造親鸞聖人座像は、高さおよそ60センチメートルです。慶長6年の由来書には、本願寺八代蓮如が親鸞聖人九十歳の時の姿を彫ったものと記されています。美術評論家の柳宗悦は、この像を彫刻作品として高く評価し、おそらく室町時代（足利期）のものであろうと推定しました。親鸞聖人を描いた古い肖像としては、京都の本山にある「鏡の御影」や三河国（現愛知県）桑子の妙源寺にある「安城の御影」などが知られていますが、室町時代まで遡る彫像は非常に珍しく、この点でも像の貴重性は際立っています。平成20年に実際に像を拝観した仏教史家の今井雅晴氏は、像が親鸞聖人を「貴族というイメージではなく、地方の農村で力強く大地に生きる姿」として表現していると評しています。

この木造親鸞聖人座像は、平成元年（1989年）6月10日に当時の平村の文化財に指定されました。その後、市町村合併により南砺市が誕生した後も、引き続き有形文化財・彫刻として南砺市の指定文化財となっています。称名寺は、五箇山における真宗の歴史、特に専光寺との関係性の変遷を物語る重要な寺院であり、木造親鸞聖人座像はその歴史を象徴する貴重な文化財と言えるでしょう。

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