称念寺 (奈良市)

称念寺（しょうねんじ）

称念寺は、奈良市にある浄土宗の寺院で、古くからの歴史と文化を今に伝える場所です。

歴史

称念寺の起源は古く、往古には法相宗の草庵として築地之内に存在したと伝えられています。仁安2年（1167年）には、俊乗坊重源が中国（宋）に渡り、善導大師の旧跡である終南山悟真寺に参詣し、善導大師の尊像を懇願しました。翌年、重源が帰国した際にこの寺を再建したとされ、重源が開基とされています。

その後、広瀬郡細井戸村の浄土寺第三世である頓誉が阿弥陀如来を祀り、浄土信仰の寺として発展しました。第二代は誠誉で、現在は中興から数えて第二十八世となっています。

特筆すべきは、称念寺が木辻遊廓内に位置していたため、遊廓で亡くなった娼妓の引導寺となり、彼女たちの往生浄土を願う回向を執り行ってきたという点です。この事実は、寺院が地域社会と深く関わり、人々の心の拠り所であったことを物語っています。

境内

境内には、歴史を感じさせる様々な建造物や碑があります。

本堂

本堂の内陣には、宮殿厨子があり、本尊である阿弥陀如来と、観音・勢至の両脇侍が祀られています。また、左右には善導大師立像と法然坐像が安置されています。特に、善導大師像は中国伝来とされ、下半身には金箔が施されていないという特徴があります。昭和49年には修理が行われましたが、寛永年間の改築時の棟札が見つかったとされています。

愛染堂

愛染堂には、愛染明王、厨子入歓喜天、不動明王が祀られています。

芭蕉の句碑

元禄7年（1694年）9月9日、俳聖・芭蕉が当寺に立ち寄った際に、

菊能香也奈良爾盤婦留幾仏達

（きくのかや ならにはふるき ほとけたち）

という句を詠みました。寛政5年（1793年）には、芭蕉の百回忌が行われた際に、本堂前にこの句を刻んだ句碑が建てられ、現在もその姿を見ることができます。

六字名号碑

本堂前の無縁塔（納骨堂）や墓地には、室町時代からの碑がいくつか残っています。中でも重要なのは、無縁塔頂上にある大きい板碑型の六字名号碑です。この碑は慶長19年（1614年）10月に建立されたもので、第二代玄蓮社誠誉上人の名が刻まれています。

称念寺は、その長い歴史の中で、多くの人々の信仰と文化に触れ、それらを今に伝える貴重な存在です。奈良を訪れた際には、ぜひ足を運んでみてください。

参考文献

奈良市史編集審議会編『奈良市史 社寺編』、吉川弘文館、1985、p.166
『日本歴史地名大系. 第30巻 (奈良県の地名)』 （平凡社 1981年） p.530

関連項目

木辻遊廓
ならまち

外部リンク

* 称念寺本堂 - 奈良市

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