稚狭王

稚狭王の生涯と役割

稚狭王（わかさのおおきみ、生没年不詳 - 天武天皇7年（678年）9月）は、日本の飛鳥時代に活躍した皇族です。特に672年に発生した壬申の乱において、その存在が注目されています。稚狭王は倭京（当時の都であり、飛鳥の古い都）に居住しており、大海人皇子（後の天武天皇）に従う形で重要な使命を果たしました。

壬申の乱の背景

天武天皇元年の672年6月、大海人皇子が挙兵した際、日本は大きな動乱の渦中にありました。この時、他の皇族、大友皇子（後の弘文天皇）が高坂王を留守司として軍を編成させていました。その中で、稚狭王も倭京にいて、この軍勢に加わっていたとされています。稚狭王は大友皇子の計画に関与していたものの、情勢は変わっていきます。

大海人皇子に味方した大伴吹負は、大友皇子の指揮権を奪う大胆な計画を立てました。彼は少数の兵を率いて敢行し、敵軍の指揮権を奪取することに成功します。内応を得た吹負は、敵将の穂積百足を殺し、穂積五百枝と物部日向を捕らえました。この捕虜たちは後に赦され、彼の軍に加わることになりました。

稚狭王の参加とその後

稚狭王もまた、大友皇子の軍に従い行動しました。彼らはこの戦いの中で重要な役割を果たし、稚狭王もその指揮系統に加わっていました。彼の貢献によって、軍勢は士気を高め、壬申の乱における戦局に影響を与えることができたと考えられます。

しかし、戦乱の激化に伴い、時代は変わり、最終的には天武天皇の台頭が決定づけられました。稚狭王は中立的な立場にありながらも、大海人皇子に従い、歴史の一部を形成したと言えるでしょう。

最期と評価

稚狭王は結局、天武天皇7年（678年）の9月に三位の位を持ったまま亡くなります。彼の死は時代の大きな変化を迎えた中での出来事であり、彼が果たした役割を考えると時代の流れをしっかり捉えたものでした。稚狭王は歴史の一幕において、特に壬申の乱における重要な役割を果たした人物として記憶されています。

参考文献

• - 宇治谷孟『日本書紀 （下）』講談社〈講談社学術文庫〉、1988年
• - 宝賀寿男『古代氏族系譜集成』古代氏族研究会、1986年

もう一度検索