稲垣満次郎

稲垣満次郎：南進論を唱えた明治の外交官

稲垣満次郎（いながき まんじろう、1861年10月29日 - 1908年11月25日）は、明治時代に活躍した日本の外交官です。彼は、著書を通じて南進論を唱え、日本の海洋国家としての進路を提唱したことで知られています。

生い立ちと留学

稲垣満次郎は、肥前国平戸（現在の長崎県平戸市）で、平戸藩士の天野勇衛の息子として生まれました。藩校の維新館や鹿児島私学校で学んだ後、1882年に東京大学文学部に入学しました。翌年、東京大学明治十六年事件に連座し、英国ケンブリッジ大学ゴンヴィル・アンド・キーズ・カレッジに留学しました。ケンブリッジ大学では、ジョン・ロバート・シーリー教授に師事し、西洋の文化や思想を深く学びました。

大学在学中には日本人クラブを設立し、イギリス紳士のマナーを研究する一方、大学理事会を説得し、日本人の入学試験からギリシャ語を免除させるなど、日本人学生の学習環境改善にも貢献しました。

外交官としての活躍

帰国後、学習院や高等商業学校で教鞭を執った後、1891年に東邦協会に入り、幹事長を務めました。その後、外務省に入省し、シャム（現在のタイ）に赴任しました。1897年には在シャム国弁理公使、1903年には同特命全権公使に昇進し、外交官としてのキャリアを積みました。

1907年には在スペイン特命全権公使に任命されましたが、翌年、赴任先のマドリードで病没しました。彼の遺骨は、故郷の長崎県平戸市と、シャム公使時代に尽力した仏舎利が安置されている名古屋市の覚王山日泰寺に埋葬されています。

南進論の提唱と地政学的思考

稲垣満次郎は、近代日本において地政学的な思考を持っていた人物として評価されています。彼は、南北シーレーンの確保を重視し、日本が海洋国家として発展していくべきだと主張しました。この主張は、後の日本の外交政策に影響を与えたとされています。

著作

稲垣満次郎は、数多くの著作を残しています。代表的な著作には、『Japan and the Pacific and the Japanese View of the Eastern Question』（1890年）、『貴族論』（1891年）、『西比利亜鉄道論』（1891年）、『対外策』（1891年）、『南洋長征談』（1893年）などがあります。これらの著作を通して、彼の地政学的な思考や外交政策に関する主張を知ることができます。

栄典

稲垣満次郎は、その功績により、以下の位階と勲章を授与されました。

位階
1897年（明治30年）5月31日 - 正五位
1908年（明治41年）2月21日 - 正四位
1908年（明治41年）11月25日 - 従三位
勲章
1898年（明治31年）7月13日 - 勲三等瑞宝章

まとめ

稲垣満次郎は、明治時代の激動期に、外交官として、また思想家として、日本の進むべき道を模索し続けた人物です。彼の提唱した南進論は、今日の日本においても重要な示唆を与えてくれます。彼の功績は、後世に語り継がれるべきものと言えるでしょう。

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