稲富稜人

稲富稜人：日本の農民運動家から重鎮政治家へ

稲富稜人（いなとみ たかと、1902年10月19日-1989年11月6日）は、20世紀日本の政治史において重要な足跡を残した人物です。福岡県八女市出身の彼は、代用教員を経て早稲田大学政経学部を卒業後、農民運動に深く関わる人生を選びました。

農民運動と政界への道

1925年の大学卒業後、稲富は全日本農民組合同盟、日本農民党、社会民衆党など、複数の農民運動組織や政党に参加し、その活動は激動の時代を反映しています。 その後、日本国家社会党にも参加するものの、脱退を経て、さらに他の政治団体への所属を経て、1935年には福岡県議会議員に当選。地方政治の世界で経験を積みました。

戦後の1946年、日本社会党から衆議院議員に初当選を果たしたものの、公職追放を受け、同年中に辞職という苦杯をなめることになります。しかし、追放解除後の1953年には、右派社会党から再選を果たし、以後、13期もの長きにわたって国会議員を務めました。

政界での活躍と要職歴任

その間、社会党、民主社会党、民社党と政党を渡り歩きながらも、政治家としての力量を遺憾なく発揮しました。民社党では、中央執行委員、農林漁業対策委員長、統制委員長、国会議員団長など、要職を歴任。衆議院内でも、懲罰委員長、沖縄及び北方問題に関する特別委員長といった重要なポストを担いました。

さらに、全国農民同盟の会長として長年その組織を率い、日本の農業政策に大きな影響を与えたことは注目に値します。これらの活動を通じて、稲富は日本の農民の権利と福祉のために尽力し、その活動は広く社会に貢献しました。

叙勲と晩年

功績が認められ、1972年秋の叙勲で勲二等瑞宝章、1977年秋の叙勲で勲二等旭日重光章、1986年春の叙勲で勲一等瑞宝章を受章するなど、数々の栄誉に輝きました。 1986年に政界を引退し、1989年11月6日、87歳で生涯を閉じました。死没に伴い、従三位に叙せられました。

競馬との関わり

意外な一面として、稲富は日本中央競馬会の馬主登録（名義は「有限会社イナトミ」）も行っており、「走る労働者」の異名を取った名馬イナボレスを所有していました。イナボレスはオールカマーや目黒記念などの重賞レースを制覇したことで知られています。この事実は、政治家としての顔とは異なる、稲富の人間的な魅力の一端を垣間見せてくれます。

まとめ

稲富稜人は、農民運動から出発し、衆議院議員として13期に渡る長期政権に携わり、日本の農業政策や社会問題に大きな影響を与えた政治家です。 農民運動への情熱と長年にわたる政治活動、そして意外な競馬との関わりを通して、彼の多様な側面と複雑な人生を垣間見ることができるでしょう。彼の生涯は、激動の時代の日本の政治と社会の変遷を理解する上で貴重な資料となるでしょう。

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