イナボレス

イナボレス - 中央競馬重賞最多出走記録保持馬

1969年5月30日生まれのイナボレスは、日本中央競馬会に所属した競走馬にして、誘導馬としても活躍したサラブレッド系種馬です。中央競馬重賞における最多出走記録を保持し、「花の47年組」の一頭としても知られています。その類まれなタフさと粘り強さから「走る労働者」という異名で親しまれました。この記事では、イナボレスの生涯、輝かしい戦績、そして引退後の軌跡までを詳細に解説します。

複雑な血統と意外なオーナー

イナボレスの血統は、純粋なサラブレッドではありません。父は重賞4勝を挙げたサラブレッドのヘリオスですが、母系を辿ると、曾祖母の父に初代ハクシヨウ、さらに遡ると、徳川家茂にナポレオン3世から贈られたアングロアラブの高砂に行き着きます。この複雑な血統は、イナボレスの驚くべきタフさを生み出した要因の一つかもしれません。

イナボレスは抽選馬でしたが、当時民社党所属の衆議院議員であった稲富稜人がオーナーとなり、東京・大久保末吉厩舎に入厩しました。この稲富との関係は、イナボレスの競走生活に大きな影響を与えます。

驚異的なタフネスと粘り強さ

1971年8月にデビューしたイナボレスは、初勝利こそ遅かったものの、その後は数々の重賞レースに挑み続けました。常に上位を争う安定した成績を残し、多くのファンを魅了しました。

1972年にはオールカマーで重賞初制覇を達成。700万条件の身ながら、有力馬を抑えての勝利は、稲富議員の選挙資金にも大きく貢献したと言われています。しかし、その後は連敗を喫することもありました。

1974年には金杯（東）と目黒記念（秋）で重賞2勝目を飾り、1975年には愛知杯で重賞4勝目を挙げました。これらの勝利は、イナボレスの並々ならぬタフネスと、稲富議員の強い信念、そして大久保厩舎の献身的なサポートがあったからこそ生まれたものと言えるでしょう。

「オイボレス」と呼ばれた理由

幾多のレースを戦い抜いたイナボレスでしたが、その過酷なレース生活は、時折、彼の身体に深刻な負担を強いました。種子骨直靭帯を痛めた際には、函館で独特の湿布療法を受けました。この療法は、当時としては画期的なものでしたが、同時にイナボレスがいかに酷使されていたかを示すものでもあったと言えます。そのため、ファンからは「オイボレス」と心配されながらも、彼は走り続けました。

引退後

1976年、稲富議員の選挙資金確保のため現役を続行したイナボレスでしたが、同年、現役を引退しました。種牡馬としてはサラブレッド系種馬という血統のハンデから断念しましたが、栗毛の美しい馬体を活かし、東京[[競馬場]]の誘導馬として1980年代後半まで活躍しました。その後については、詳細は不明です。

イナボレスが残したもの

イナボレスは、その類まれなタフネスと粘り強さで、多くのファンを魅了しました。「走る労働者」として知られる彼は、決して華々しい勝利ばかりを収めたわけではありませんでしたが、その努力と闘志は、競馬史に大きな足跡を残しました。彼の功績は、中央競馬重賞最多出走記録という数字だけにとどまらず、多くの人の記憶に刻まれた、忘れられない名馬として語り継がれています。彼の生涯は、競走馬としての限界を超えた、人間の信念と努力の物語でもありました。

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