稲沢銀行

稲沢銀行（いなざわぎんこう）

稲沢銀行は、かつて愛知県中島郡稲沢町（現在の稲沢市）に本店を置いていた地方銀行です。1900年（明治33年）に設立され、地域の経済を支えましたが、1945年（昭和20年）に戦時統合により東海銀行（現在の三菱UFJ銀行が承継）に合併されました。この記事では、稲沢銀行の設立から終焉までの歴史を詳細に解説します。

歴史

設立

1900年（明治33年）4月22日、稲沢銀行は愛知県中島郡稲沢町に設立されました。設立時の資本金は15万円で、発起人には山田市三郎、原平左衛門、田中甚三郎など、地元の有力者11名が名を連ねました。稲沢市域に本店を持つ初の銀行として、地域経済の発展に貢献することが期待されました。

当時の稲沢町は美濃路の宿場町として栄え、中島郡は名古屋市の近郊地域として、比較的早くから商品作物が導入された地域でした。発起人の中心は、広大な土地を所有する地主の山田一族であり、山田市三郎が初代の取締役頭取に就任しました。山田家は江戸時代には尾張藩の為替御用達を務めた素封家であり、銀行の総株数の10%を引き受けるなど、経営に深く関与しました。

発展

1907年（明治40年）頃には、稲沢銀行は稲沢町に本店を置き、萩原町、明治村に支店を展開しました。さらに、稲沢町、萩原町、明治村、大里村、大和村、朝日村、千代田村に多数の営業所を設け、地域全体にサービスを提供しました。

1913年（大正2年）には、稲沢町大字稲沢字稲葉町に本店を新築し、移転しました。当時、多数の銀行が乱立する中で、稲沢銀行は競争を勝ち抜くために、1918年（大正7年）に中尾銀行同盟を結成し、他の銀行と連携しました。1920年（大正9年）には山田佑一が取締役頭取に、1926年（大正15年）には山田十一郎が取締役に就任し、経営体制を強化しました。

戦時統合

十五年戦争下において、稲沢銀行は千秋銀行や清洲銀行の営業権を譲り受け、1939年（昭和14年）には尾張地方唯一の本店銀行となりました。しかし、戦時下の一県一行主義により、1945年（昭和20年）には岡崎銀行や大野銀行とともに東海銀行への合併が決定されました。終戦の日である8月15日の臨時株主総会で合併が承認され、9月17日に東海銀行に合併されました。

稲沢銀行の本店跡地には、現在「稲沢銀行跡地」という石碑が建てられています。これは、稲沢銀行が地域経済に果たした役割を記念するものです。

営業所

本店・支店

本店
萩原支店 - 1900年（明治33年）6月設置
東支店
井堀支店 - 1909年（明治42年）8月28日設置
明治支店 - 1919年（大正8年）11月1日設置
小牧支店 - 1935年（昭和10年）4月5日設置
千秋支店 - 1937年（昭和12年）4月1日設置
祖父江支店 - 1937年（昭和12年）7月5日設置
清洲支店 - 1937年（昭和12年）8月19日設置
甚目寺支店 - 1937年（昭和12年）8月19日設置
名古屋浄心支店 - 1938年（昭和13年）6月4日設置
新川支店 - 1938年（昭和13年）8月8日設置
犬山支店 - 1939年（昭和14年）1月4日設置
一宮支店 - 1939年（昭和14年）12月4日設置
津島支店 - 1940年（昭和15年）11月5日設置

出張所

下市場出張所 - 1937年（昭和12年）4月1日設置
神野出張所 - 1937年（昭和12年）4月1日設置
東支店多加木出張所 - 1937年（昭和12年）2月28日廃止
下津出張所 - 1937年（昭和12年）8月19日設置
四ツ家出張所 - 1937年（昭和12年）8月19日設置
丸ノ内出張所 - 1937年（昭和12年）8月19日設置、1938年（昭和13年）8月6日廃止
浅野出張所 - 1938年（昭和13年）8月13日廃止
* 岩倉北島代理店 - 1938年（昭和13年）8月13日廃止

稲沢銀行は、短期間ながらも地域経済の発展に大きく貢献した銀行でした。その歴史は、石碑として今もその名残を留めています。

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