稲葉正親

稲葉正親について

稲葉正親（いなば まさちか）は、江戸時代中期の武士であり、山城淀藩の第4代藩主です。正成系稲葉家宗家の8代目にあたります。その生涯は、旗本から大名へと異例の出世を遂げたことで知られています。

生い立ちと養子入り

元禄5年（1692年）、大田原晴川（おおたわら はるかわ）の次男として、大田原の地で生まれました。大田原氏は、下野国の大名で、正親は武士の家に生まれ育ちました。その後、淀藩の初代藩主である稲葉正知（いなば まさとも）の叔父にあたる稲葉正直（いなば まさなお）の養嗣子となります。この養子縁組により、正親は稲葉家の一員となり、武士としてのキャリアを歩み始めることになりました。

旗本としての活動

宝永7年（1710年）4月19日、将軍徳川家宣（とくがわ いえのぶ）に御目見えし、幕府に仕えることになります。享保8年（1723年）7月23日、養父の隠居により家督を継ぎました。この時、旗本稲葉家は、相模国（現在の神奈川県）の足柄郡内に2000石の所領を持っていました。旗本として、正親は幕府の役職を歴任し、享保9年（1724年）1月28日には御使番（おつかいばん）に就任します。同年6月25日には、火事場見廻（かじばみまわり）を命じられ、江戸の火災に対する警戒任務に携わりました。同年12月28日には、布衣（ほい）となり、一定の身分を得ます。さらに、享保13年（1728年）7月1日には、小姓組番頭（こしょうぐみばんがしら）に就任し、将軍の身辺警護や側近としての役割を担いました。同年12月21日には、従五位下・越中守（じゅごいげ・えっちゅうのかみ）に叙任され、位階を得ます。

淀藩主へ

享保15年（1730年）3月27日、本家の先代藩主であった稲葉正恒（いなば まさつね）が急逝したため、その跡を継ぎ、淀藩の第4代藩主となりました。この時、旗本稲葉家は絶家となり、正親は藩主として新たなスタートを切ることになります。同年5月28日、将軍徳川吉宗（とくがわ よしむね）に御目見えし、藩主としての挨拶を行いました。享保16年（1731年）6月28日には、奏者番（そうじゃばん）に就任し、幕府との連絡や儀式における役割を担いました。

大坂城代

享保19年（1734年）6月6日、大坂城代（おおさかじょうだい）に就任し、従四位下に昇進しました。大坂城代は、西日本の政治・軍事を統括する重要な役職であり、正親の能力が幕府に認められたことを示しています。同年7月1日には、大坂への赴任許可を得て、西国へと向かいました。

死去

大坂城代として活躍していた正親ですが、同年9月14日、大坂で死去しました。享年43歳という若さでした。跡は長男の正益（まさえき）が継ぎました。

系譜

実父：大田原晴川
養父：稲葉正直、稲葉正恒
正室：柴田氏（稲葉正直の養女）
子女：
稲葉正益（長男）
稲葉正福（次男）
稲葉正明（三男）
稲葉正名（四男）
* 稲葉正春（五男）

稲葉正親は、大田原氏という地方武士の家に生まれながら、稲葉家という名門に迎えられ、旗本、そして大名へと出世を遂げた人物です。また、大坂城代という重要な役職を務め、その能力を発揮しました。若くして亡くなったものの、その生涯は、江戸時代中期における武士の生き方を示すものとして、歴史に名を残しています。

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