穂井田忠友

穂井田忠友：正倉院文書と国学の研究者

穂井田忠友(ほいだただとも、岡山県'>[1791年]]-1847年)は、江戸時代後期を代表する国学者、考古学者です。備中国]に生まれ、幼少期は生い立ちに関する詳細な記録が欠けており、諸説あります。[摂津国]の生玉神社の社司の養子となり、その後、[駿府]で[[平田篤胤に師事して国学を学びました。さらに、京都で藤林普山に西洋医術を学ぶなど、幅広い知識を習得した人物でした。

また、歌人としても才能を発揮し、香川景樹に師事。桂門四天王や桂門十哲に数えられるほどの実力を持つ歌人としても知られていました。

忠友の生涯における大きな転機は、禁奥付武家の梶野良材の庇護を受けたことです。天保2年(1831年)、梶野良材が奈良奉行となると、忠友は奈良に移り住み、その地で歴史に名を残す仕事に携わることになります。天保4年(1833年)から天保7年(1836年)にかけて行われた正倉院宝庫の修理に際し、忠友は器物や文書の調査を許されました。この仕事を通して、忠友は『正倉院文書』正集45巻の整理に携わり、奈良時代の貴重な史料を初めて世に紹介するという偉業を達成したのです。その功績は、日本の歴史研究において計り知れない価値を持ちます。

正倉院文書の調査・整理は、忠友にとって単なる仕事ではありませんでした。彼は、その仕事に並々ならぬ情熱を注ぎ込みました。その情熱は、ある逸話に象徴的に表れています。正倉院御物を見る便宜を得るために、忠友は一人娘を梶野良材の側室にしたというのです。森鷗外はこの出来事を題材にした和歌を詠み、森銑三も忠友の熾烈な研究心に敬意を表しています。この逸話は、忠友の研究への強い意志と、そのために払った犠牲の大きさを物語っています。

奈良時代の考証に精通していたことから、「ならや」の異名をとるほど、忠友は奈良の歴史に深い造詣を持っていました。晩年は京都に移り住み、医術で生計を立てながら、伴信友、新庄道雄、赤尾可官、松岡帰厚、鈴鹿連胤、竹尾正寛、羽田野敬雄、御巫清直といった多くの学者たちと交流を深めました。

忠友の没後、彼の業績は様々な形で後世に伝えられています。『中外銭史』『文氏墓誌考実』『埋麝発香』『観古雑帖』『高ねおろし』『続日本紀問答』『御位記略注』『玉襷改竄』『扶桑国考』『皇朝古印譜』といった著作は、忠友の研究成果の証です。また、『寛永銭譜』『東大寺正倉院宝物図考証』『名蹟臆断』『万葉地名考』『新十六夜日記』『続日本紀通証』といった著作も伝えられていますが、現存は不明です。

彼の著作は、岡本通理・藤原玄珠編の『穂井田先生文集』や簗瀬一雄編の『穂井田忠友全歌集』といった形でまとめられ、後世の研究者たちに役立っています。これらの資料は、忠友の多岐に渡る研究活動と、その成果の大きさを示す重要な文献となっています。彼の研究は、現代の日本史研究にも多大な影響を与え続けています。

57歳という年齢で亡くなった忠友ですが、彼の残した功績は、今もなお人々の心に深く刻まれています。正倉院文書の整理を通して日本の歴史研究に多大なる貢献をした、まさに時代を彩った学者であったと言えるでしょう。

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