穂積律之助

穂積 律之助

穂積 律之助（ほづみ りつのすけ）は、明治から昭和にかけて活躍した日本の工学者であり、大日本帝国海軍の軍人でした。海軍においては造船技術の分野で要職を歴任し、最終階級は海軍造船少将に至りました。

生涯と家族背景

1884年（明治17年）8月13日、東京府にて誕生しました。父は著名な法学者で男爵の穂積陳重、母は歌人であり、日本の近代経済の父と称される渋沢栄一の長女である歌子です。したがって、律之助は渋沢栄一にとって2番目の孫にあたります。この家系は、父方の穂積家、母方の渋沢家双方から、日本の政界、法曹界、学術界、実業界に多くの人材を輩出しています。

律之助には多くの兄弟姉妹がおり、それぞれが著名な家系と姻戚関係を結んでいます。兄の穂積重遠は法学者で男爵、東京帝国大学法学部長や最高裁判所判事を務め、岳父には軍人の児玉源太郎、義弟には政治家の木戸幸一がいます。妹の孝子は東京大学工学部長や名古屋大学長を務めた渋沢元治に嫁ぎ、同じく妹の石黒光子は農林省次官や農商大臣を歴任した石黒忠篤の妻となりました。また、弟の穂積真六郎は朝鮮総督府の局長や参議院議員を務め、妹の市河晴子は英文学者の市川三喜と結婚しています。

さらに、伯父（父・陳重の兄）の穂積八束も著名な法学者で東京帝国大学法科大学長などを務め、その妻は浅野財閥創業者の浅野総一郎の娘です。叔母（母・歌子の妹）の阪谷琴子は、大蔵大臣や東京市長を歴任した子爵の阪谷芳郎に嫁いでいます。従弟には、大蔵大臣や日本銀行総裁を務めた渋沢敬三、東京大学法学部長となった尾高朝雄などがいます。

律之助自身の妻である季子は、実業家の榊茂夫の三女です。長女の久保泰子は東京大学法学部長や國學院大学教授を務めた久保正幡に嫁ぎ、次女の磯野富士子はモンゴル研究家で東京教育大学教授などを務めた磯野誠一の妻となりました。このように、律之助自身もまた、日本の知的・経済的エリート層の広範なネットワークの中に位置していました。

学歴と軍歴

律之助は、1910年（明治43年）に東京帝国大学工科大学の造船学科を卒業し、造船工学の道を志します。大学卒業後、海軍に入隊し、技術将校としてのキャリアを積んでいきます。大日本帝国海軍においては、造船技術部門の中枢を担う部署で様々な要職を歴任しました。海軍艦政本部の部員として艦艇設計や建造計画に携わり、呉海軍工廠では造船部長として現場の指揮を執りました。さらに再び艦政本部へ出仕し、海軍技術研究所では造船研究部長として、将来の艦艇技術の研究開発を推進しました。これらの要職を通じて、日本の海軍力整備に技術的な貢献を果たしました。しかし、1933年（昭和8年）には海軍の予備役に編入され、軍務から離れることとなります。

軍退役後の活動

海軍を退いた後、律之助は民間企業へと活躍の場を移しました。彼の祖父である渋沢栄一が設立に深く関わった石川島造船所株式会社（現在のIHI）に入社し、取締役兼造船部長を務めました。ここでは、これまでの海軍での経験と知識を活かし、民間の造船業の発展に貢献しました。

晩年

晩年は公の場から離れ、静かな生活を送ったと推測されます。1959年（昭和34年）2月23日に逝去しました。日本の近代化が進む時代において、海軍の造船技術者として、また民間の技術者・経営者として、その専門能力を発揮した人物でした。

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