阪谷琴子

阪谷琴子

阪谷 琴子（さかたに ことこ）は、明治から昭和にかけて社会貢献に尽力した日本の慈善活動家です。明治3年（1870年）2月22日、新暦では同年3月23日に、近代日本の経済基盤を築いたことで知られる子爵 渋沢栄一とその妻 千代の間に次女として誕生しました。生地は東京府でした。

幼い頃に実母 千代と死別した後、同母弟である渋沢篤二と共に、法学者で東京帝国大学教授を務めた義兄の穂積陳重と、その妻であり実姉にあたる歌子の夫婦のもとで育てられました。姉夫婦からの深い愛情を受けて成長した琴子は、明治21年（1888年）に、後に大蔵大臣や東京市長などを歴任する阪谷芳郎と結婚します。芳郎は後に男爵、さらに子爵となります。結婚の翌年には長男の希一が生まれ、これを皮切りに、賑やかな家庭が築かれていきました。夫である芳郎が特に家庭における教育の重要性を説いていたため、琴子は夫のそうした考えを尊重し、温かい愛情を注ぎながら子供たちの養育に心を尽くしたと伝えられています。

家庭を守る務めを果たす一方で、阪谷琴子は結婚後、社会的な慈善活動にも積極的に参加しました。慈恵医院婦人会に加わり、病に苦しむ人々への支援や医療の向上に資する事業に力を注ぎます。その熱心な取り組みと功績は高く評価され、当時の皇后陛下（昭憲皇太后）から、上野慈恵病院（現在の東京慈恵会医科大学附属病院の前身の一つ）の常置幹事という重要な役職を拝命するという栄誉にあずかりました。これは、当時の女性が社会の表舞台で活躍する機会が限られていた時代において、彼女の活動がいかに影響力のあるものであったかを示す出来事と言えるでしょう。

琴子と夫 芳郎の間には、長男の希一を含め、七人の子供たちが生まれました。長男 希一は後に父の爵位を継ぎ、日本銀行や満州国国務院、中国聯合準備銀行などで要職を歴任しました。希一の岳父は日本銀行総裁を務めた三島彌太郎です。希一の娘婿には、大島寛一や植村泰忠などがいます。琴子の孫にあたる芳直は、海軍主計中尉を務めた後、東急ホテルズ・インターナショナルで常勤監査役を務めました。長女の敏子は明治23年（1890年）に生まれ、堀切善次郎のもとへ嫁ぎましたが、大正10年（1921年）に31歳という若さで病のため亡くなりました。次女の和子は明治24年（1891年）生まれで、高嶺俊夫の妻となりましたが、大正12年（1923年）の関東大震災により、信子、孝子、秀一、貞子という四人の子供を残して命を落としています。次男の俊作は京都帝国大学で学び、後に市立名古屋図書館の館長を務めました。俊作の岳父は八十島親徳です。三女の八重子は男爵中村貫之に嫁ぎました。四女の千重子は、ディーゼル機器やゼクセルで社長を務めた工学士の秋庭義衛のもとへ嫁いでいます。五女の總子は、伊藤長次郎の嗣子である伊藤熊三に嫁ぎました。晩年、琴子は孫である芳直の成長を何よりも楽しみにして過ごしたと言われています。

昭和14年（1939年）10月26日、阪谷琴子は数え年70歳（満69歳）でその波乱の生涯を閉じました。夫の阪谷芳郎は、琴子の死去から約2年後の昭和16年（1941年）に78歳で後を追うように亡くなっています。

近代日本の慈善活動の一端を担い、多大な功績を残した阪谷琴子の生涯は、現代においても関心を集めており、2021年に放送されたNHK大河ドラマ「青天を衝け」では、父・渋沢栄一の物語の一部として、幼少期の彼女の姿が描かれています。

（※注：原文に「描」で文章が終わっている可能性があるため、そのままとしています。）

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