究極 (アルバム)

イエス『究極』(Going for the One) - プログレッシブ・ロックの深化と回帰

『究極』は、1970年代のプログレッシブ・ロックを代表するバンド、イエスが1977年に発表した8枚目のスタジオ・アルバムです。リック・ウェイクマンの復帰が大きな話題となり、音楽的にも重要なターニングポイントとなりました。前作『リレイヤー』発表後、メンバーはソロ活動期間を経て再集結し、本作の制作に取り組みました。

制作の背景

1973年のアルバム『海洋地形学の物語』の内容を巡り、リック・ウェイクマンは他のメンバーと対立し、イエスを脱退しました。その後、パトリック・モラーツが加入しますが、短期間で脱退。ウェイクマンはマネージャーのブライアン・レーンの仲介で、サポート・メンバーとして本作の制作に参加、その後正式メンバーとして復帰しました。税金対策のためスイスで制作が開始されましたが、制作環境の変化も音楽性に影響を与えています。

音楽的特徴

本作は、イエス自身がプロデュースを手掛け、よりバンドの個性が色濃く反映された作品となりました。レコーディングは、スイスのモントルーにあるマウンテン・スタジオで行われました。ウェイクマンが担当した「パラレルは宝」と「悟りの境地」で演奏されたパイプ・オルガンは、ヴヴェイの教会のものを使用し、電話回線を通じてスタジオで録音するという特殊な方法が用いられました。これにより、楽曲に独特の雰囲気と奥行きがもたらされています。

ジャケット・デザイン

ロジャー・ディーンに代わり、ヒプノシスがジャケット・デザインを担当しました。コラージュされたビルディングは、カリフォルニア州センチュリー・シティのセンチュリー・プラザ・タワーズの写真が使用されています。前作までとは異なるアートワークは、音楽性の変化を視覚的に表現しています。

評価と影響

『究極』は、本国イギリスで高い評価を獲得し、『メロディ・メイカー』と『レコード・ミラー』という異なる音楽誌で1位を獲得しました。シングル・カットされた「不思議なお話を」も両誌でトップ10入りを果たしています。ウェイクマンの復帰による音楽性の変化は、賛否両論ありましたが、アルバム全体の完成度の高さは多くのファンを魅了しました。

エピソード

パトリック・モラーツが脱退した時期については諸説あり、リハーサル前ともリハーサル開始後とも言われています。彼は、自身のソロ・アルバム『Out in the Sun』に収録された「Time for a Change」を根拠に、「悟りの境地」の作曲に関与したと主張しています。スティーヴ・ハウはモラーツの貢献を一部認めています。日本での初盤LPは3面開きのジャケットで、アメリカで生産されたレコードが使用され、販売店によってはポスターが付属していました。レコーディング風景はプロモーション用にビデオ撮影されましたが、一般公開はされず、一部がブートレッグとして出回りました。レコーディング後、同じスタジオでウェイクマンのソロ・アルバム『罪なる舞踏』のレコーディングが行われ、クリス・スクワイアとアラン・ホワイトが参加しています。

収録曲

1. 究極 - "Going For The One"
2. 世紀の曲り角 - "Turn Of The Century"
3. パラレルは宝 - "Parallels"
4. 不思議なお話を - "Wonderous Stories"
5. 悟りの境地 - "Awaken"

リマスター盤

2003年に発売されたリマスター盤CDには、以下のボーナス・トラックが追加収録されています。

1. モントルーズ・テーマ - "Montreux's Theme"
2. ヴェヴェイ - "Vevey (Revisited)"
3. アメイジング・グレース - "Amazing Grace"
4. 究極 (リハーサル) - "Going for the One (Rehearsal)"
5. パラレルは宝 (リハーサル) - "Parallels (Rehearsal)"
6. 世紀の曲がり角 (リハーサル) - "Turn of the Century (Rehearsal)"
7. イースタン・ナンバーズ (アーリー・ヴァージョン) - "Eastern Numbers (Early Version of \"Awaken\")"

レコーディング・メンバー

ジョン・アンダーソン – ボーカル、ハープ
スティーヴ・ハウ – ギター、ポルトガルギター、ペダル・スティール・ギター、ボーカル
クリス・スクワイア – ベース、ボーカル
リック・ウェイクマン – キーボード
* アラン・ホワイト – ドラムス、パーカッション

『究極』は、イエスの音楽的探求心とメンバー間の創造性が結実したアルバムであり、プログレッシブ・ロックの歴史において重要な作品の一つとして評価されています。

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