穿入蛇行

穿入蛇行（せんにゅうだこう）について

穿入蛇行とは、滑走斜面を有し、蛇行する河流が谷を形成した状況を指します。この現象は、穿入曲流とも呼ばれ、ループが広がりながら河流がその流路を掘り下げていく過程を示しています。このような蛇行は、生育曲流とも表現され、河川の侵食により地形が若返ることを反映していると考えられています。

定義と特徴

穿入蛇行は、長く発達した滑走斜面を伴い、流れる河流が曲がりくねった谷を形成する状態を意味します。侵食がより強く働いているため、河床の急激な下刻が見られ、谷はさらに深く掘り進まれます。この過程は、浸食が背景にあり、特に侵食が鉛直方向に顕著な場合は、嵌入曲流と呼ばれる別の地形タイプが形成されます。

穿入蛇行と嵌入曲流の違い

穿入蛇行と嵌入曲流は、どちらも蛇行河流によって形成されますが、その形成過程には明確な違いがあります。穿入蛇行は、流れる河川が浸食を受けながら流路を掘り下げて形作られます。一方、嵌入曲流は、河川の侵食が主体となり、ループが拡大できないまま形成されます。これは、相対的に隆起速度が速く、土壌の下刻が急速に進行している場合に特徴的です。具体的な例として、イギリスのダラムで見られるウェア川があります。

穿入蛇行の形成プロセス

穿入蛇行の形成には主に二つのプロセスが存在します。一つ目は、氾濫原で自由に蛇行していた川が急激な地盤隆起により、下刻作用が復活する場合です。この結果、河流が曲がった流路に沿って谷を掘り進め、穿入蛇行を生じます。これが「掘削蛇行」と呼ばれる現象で、特に深く掘り下げられた谷は両側の壁が同様の傾斜を持つ特徴があります。

二つ目は、地盤が継続的に隆起しながら、多少曲がって流れる河流が屈曲の度を増しつつ下刻を行う場合です。このとき、河流はその慣性によって左側と右側の谷壁に交互に衝突し、側刻作用が強まります。このように流路が交互に蛇行し、屈曲の度が増加する現象は「生育蛇行」と呼ばれます。

また、屈曲した流路の外側の谷壁は急傾斜となり「攻撃斜面」として知られ、内側の緩やかな斜面は「滑走斜面」と命名されます。

穿入蛇行の研究者とその発見

コロラド地方のサンジュアン川における蛇行の形成を研究したMoore,R.C.は、穿入蛇行に関して重要な見解を提供しました。彼は、岩石の性質が地形の形成において重要であると論じ、硬岩の部分では掘削蛇行が生成され、逆に軟岩の部分では生育蛇行が形成されると指摘しました。この見解は、地形の理解を深める上で重要なものであります。

穿入蛇行の具体例

日本国内では、紀伊半島の熊野川、日高川、日置川、さらには四国の四万十川の上流など、さまざまな河川で穿入蛇行が見られます。また、外国では、フランス北部のセーヌ川やアメリカ合衆国のコロラド川に存在するホースシューベンドなどが著名な例とされています。

関連文献と研究

このテーマに関しては、いくつかの研究が行われており、特に穿入蛇行の成り立ちや流路変動についての研究が進められています。興味深い成果として、日本国内の河川に特化した研究論文や、国土地理院の関連ページなどが存在し、さらに詳しい情報が提供されています。これらの資料を通じて、穿入蛇行の形成背景や流路変動に関する知識を深めることができます。

このように、穿入蛇行は河川の侵食過程と地形生成の理解に重要な役割を果たす地形現象です。

もう一度検索