竹中英太郎

竹中英太郎：多才な才能で時代を駆け抜けた挿絵画家

竹中英太郎（1906年12月18日 - 1988年4月8日）は、挿絵画家、労働運動家、そして実業家として、激動の昭和を生きた人物です。長男は評論家の竹中労。竹中労の著作やレコードジャケットの装画を数多く手掛けたことでも知られています。

波乱万丈な幼少期と社会運動への目覚め

福岡市で没落士族の家庭に生まれた竹中。幼い頃に父を亡くし、極貧の中で育ちました。熊本に移住後、警察での給仕の仕事を通じて社会主義思想に触れ、社会運動に身を投じることになります。熊本無産者同盟の設立に加わったり、熊本水平社の創立にも参加し、社会変革を目指しました。

挿絵画家としての才能開花

革命運動には経済学の知識が必要と考え、上京。第一外国語学校と川端画学校で学びながら、挿絵のアルバイトを始めます。これがきっかけとなり、挿絵画家としての才能を開花させました。横溝正史が編集長を務めていた「新青年」で江戸川乱歩の「陰獣」の挿絵を担当し、一躍人気画家となります。横溝正史の「鬼火」など、数々の小説に挿絵を提供し、その独特な画風で多くの読者を魅了しました。

戦中・戦後の活動

しかし、二・二六事件を機に絵筆を折り、満州へ渡ります。『月刊満洲』などの編集に携わりますが、その後帰国。鉄工所を経営するなど、実業家としての道を歩み始めました。戦後は山梨日日新聞社に入社し、新聞記者として活動。労組運動にも積極的に参加し、委員長や日本新聞労連の副委員長を務めました。また、地労委労働者側委員や山梨日日論説委員を歴任するなど、多岐にわたる分野で活躍しました。

画家としての晩年

戦後は中央画壇への復帰を固辞し、個人的な楽しみとして絵を描き続けました。しかし、長男・竹中労の依頼で祇園祭の宣伝パンフレットの制作を手掛けたり、マレーネ・ディートリヒ来日時にはポスターを制作するなど、晩年も画家としての才能を発揮しました。ディートリヒは彼の作品を非常に気に入り、持ち帰ったというエピソードも残っています。

その才能を受け継ぐ人々

晩年はサービス会社を設立し、実業家としての一面も見せました。1988年、東京で急逝。その一周忌には、東京と甲府で回顧展が開催され、その功績が讃えられました。次女の金子紫は「竹中英太郎記念館」の館長を務め、父の作品や生涯を後世に伝えています。

竹中英太郎は、激動の時代を生き抜き、様々な分野で才能を発揮した人物でした。その作品は、今も多くの人々を魅了し続けています。

主な作品集

探偵･怪奇のモダニズム　竹中英太郎・松野一夫
竹中英太郎作品譜　百怪、我ガ腸ニ入ル
竹中英太郎（生誕百年記念）

関連人物

江戸川乱歩
横溝正史
夢野久作
* 竹中労

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