能福寺

能福寺：歴史と復興の物語

兵庫県神戸市兵庫区に鎮座する能福寺は、天台宗に属する由緒ある寺院です。宝積山を山号とし、本尊は阿弥陀如来。その威容を誇る兵庫大仏で広く知られています。

寺伝によれば、延暦24年（805年）、最澄（伝教大師）によって能福護国密寺として創建されたとされ、日本最初の密教教化霊場を称しました。

平清盛とも深い関わりがあり、治承4年（1180年）の福原京遷都計画に伴い、平家一門の祈願寺に定められました。この時代、能福寺は壮大な伽藍を誇り、隆盛を極めました。しかし、興国2年/暦応4年（1341年）の兵火によって七堂伽藍を焼失する災難に見舞われます。慶長3年（1599年）、長盛法印による再興を経て、江戸時代には京都青蓮院門跡の院家として高い格式を保ちました。

太平洋戦争中の神戸大空襲（1945年3月17日）では、鐘楼堂を残して全焼。しかし、その後再建されました。1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災では、本堂が被災し、鐘楼堂は倒壊しましたが、再び復興を果たしています。

兵庫大仏：信仰と復興の象徴

能福寺の象徴である兵庫大仏は、明治24年（1891年）5月、豪商・南条荘兵衛の寄進によって建立されました。かつては日本三大仏の一つに数えられていましたが、昭和19年（1944年）5月の金属類回収令により解体され、国に供出されました。

現在の兵庫大仏は、平成3年（1991年）5月9日に再建されたものです。興味深いのは、その材料に工夫が凝らされている点です。戦時中に解体された旧大仏を発見した当時の住職が回収・保管していた金属片が、再建時に混入されているのです。毘盧舎那仏（光明遍照）像である大仏は、像重量約60トン、像高11メートル、蓮台と台座を含めると高さ18メートルにも及ぶ巨大な坐像です。開眼法要には、奈良東大寺管長や鎌倉高徳院貫主も臨席するなど、盛大なものでした。なお、江戸時代の日本三大仏は、奈良大仏、鎌倉大仏、方広寺大仏とされていました。

境内：歴史と文化の息づく空間

能福寺の境内には、数多くの建造物や史跡が点在し、歴史と文化を感じさせる空間が広がっています。

月輪影殿（本堂）： 京都東山の泉涌寺寺域にあった月輪御陵を、昭和29年（1954年）に宮内省と九条家によって移築したものです。阪神・淡路大震災で被災しましたが、平成9年（1997年）12月に復興。本尊の阿弥陀如来坐像と脇侍の観音・勢至菩薩立像は平安時代後期のものと推定され、令和6年（2024年）3月には神戸市指定有形文化財への答申がありました。
護摩堂、ビルシャナ殿（新西国三十三箇所第23番札所、十一面観音）、庫裏、講堂、北風正造君碑、ジョセフ・ヒコ（浜田彦蔵）による寺の由来碑、當勝稲荷堂、平清盛廟、鐘楼堂、滝善三郎供養碑、円實の墓 など、数多くの建造物や史跡が点在しています。

交通アクセス

神戸市営地下鉄海岸線 中央市場前駅 徒歩10分
山陽本線（JR西日本）兵庫駅 徒歩15分

能福寺は、歴史の重みと復興の力強さを感じられる、貴重な寺院です。

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