竹田敏彦

竹田敏彦：激動の時代を生き抜いた劇作家・小説家

竹田敏彦（たけだ としひこ）は、1891年（明治24年）7月15日に香川県で生まれ、1961年（昭和36年）11月15日に70歳で亡くなった日本の劇作家、小説家です。本名を敏太郎といい、その生涯は激動の時代を反映するかのようでした。

苦難を乗り越えて

竹田は、裕福な家庭に生まれましたが、中学時代に父親の事業失敗により一家は大阪へ移住。生活は困窮し、竹田自身も石炭人夫、人力車夫、沖仲仕、風呂屋の釜焚きなど、様々な肉体労働に従事しました。重労働により失明寸前になったこともありましたが、彼は仕事と将来への不安に苛まれながらも、上京して早稲田大学に入学。学費を稼ぐために按摩の仕事もしていたそうです。大学では、三上於菟吉、宇野浩二、原久一郎、日夏耿之介といった、後に名を成す人々と同期でした。

作家への転身

大学在学中に学費が続かなくなり、実業之日本社社長の増田義一や『少女の友』編集長の星野水裏に紹介され、「竹田寥水」の筆名で少女小説を発表しました。しかし、学費は賄えず英文科を中退。その後、大阪通信新聞の記者となり、大阪新報、帝国日報を経て大阪時事新報社会部副部長代理に昇進しますが、ストライキの責任を負わされ退社。大阪毎日新聞に移ります。

1924年（大正13年）、新国劇を設立し、大阪で公演していた早大時代の友人、澤田正二郎に脚本執筆を依頼されたことが転機となります。澤田に「定九郎と勘平」を書き上げ、それが菊池寛に激賞されたことから、作家としての道を歩み始めました。その後、国民新聞社会部副部長の話が持ち上がったため、大阪毎日新聞を退社し、新国劇の文芸部長となります。

多作な作家活動

「定九郎と勘平」以降、しばらく作品が上演されませんでしたが、実話ものを執筆し、生計を立てていました。39歳頃から脚本が上演されるようになり、1930年（昭和5年）には戯曲「曲馬団の娘」を発表。その後も実話ものや短篇を執筆し、人気を博します。長篇小説「暁は遠けれど」や「子は誰のもの」は特に好評で、雑誌に次々と小説を連載し、長篇作家としての地位を確立しました。「時代の霧」「夢ならぬ恋」「涙の責任」など、多くの作品が映画化され、大衆文学の分野で確固たる地位を築きました。

社会活動への貢献

竹田は、作家活動だけでなく、社会活動にも積極的に関わりました。1947年（昭和22年）には、三原スヱ及び高松少年審判所所長の加藤実行と共に「子供をよくする会」を設立し、少年少女の救済活動を開始。旧丸亀第十二聯隊兵舎を改造して「少女の家」を作り、1949年（昭和24年）には四国少年院丸亀分院として国立に移管。さらに、1952年（昭和27年）には現在の「丸亀少女の家」を建設し、多くの少女を社会に送り出しました。この「少女の家」での経験は、小説「少女の家」、「金銀」、「愛慾の海」などに活かされています。

晩年と最期

1960年（昭和35年）からは、『婦人倶楽部』に絶筆となる長篇小説「愁いある灯」を連載開始。肝臓癌で入院するも、病状を知らされないまま執筆を続けました。娘の喜久子によると、体力の衰えが激しかったものの、執筆への情熱は衰えることがなかったそうです。1961年（昭和36年）11月15日、自宅で70年の生涯を終えました。亡くなる直前には意識を取り戻し、家族に「倖せだ。心配するなよ」と告げ、笑顔を見せたといいます。

竹田敏彦は、劇作家、小説家としてだけでなく、社会貢献活動にも熱心な人物でした。彼の作品は、多くの人々に感動と影響を与え、今もなお読み継がれています。多度津町にある桃陵公園には、瀬戸内海を望む場所に文学碑が建立されており、彼の功績を称えています。

主な著書

『紅痕』
『日本の妻』
『暁は遠けれど』
『時代の霧』
『涙の責任』
『夢ならぬ恋』
『赤い手の娘達』
『歌姫懺悔』
『熱情の翼』
『子は誰のもの』
『少女の家』
『愛慾の海』
『母と子の窓』
『金銀』
* その他多数

竹田敏彦の作品は、時代を超えて今もなお、多くの人々に感動を与え続けています。

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