笈ヶ岳

笈ヶ岳：両白山地の険しき峰

笈ヶ岳（おいずるがたけ）は、石川県、富[[山県]]、岐阜県の3県にまたがる標高1,841mの山です。白山国立公園に属し、両白山地の北部に位置するその雄大な姿は、日本二百名山にふさわしく、多くの登山家を魅了しています。しかし、その登山は容易ではありません。

険しい山容と希少な展望

両白山地の中でも最も高い峰である笈ヶ岳は、北側に位置する大笠[[山]]（日本三百名山）と対峙しています。山頂部は非常に狭く、10人立つのがやっとの広さしかありません。しかし、その狭さゆえに得られる展望は素晴らしく、周囲の山々や景色を360度のパノラマで堪能できます。山頂には国土地理院の三等三角点「笈岳」が設置されています。

困難な登山と歴史的背景

笈ヶ岳の登山は、一般的な登山道が存在しないため、無雪期は極めて困難です。藪漕ぎを強いられる厳しい道のりで、積雪期の限られた期間のみ登頂が現実的です。そのため、日本二百名山の中でも特に登頂難易度が高い山として知られています。

古くは「笈摺岳」「笈劔岳」「笈釣山」「剣岳」「老鶴山」など様々な呼び名で呼ばれていました。その名の由来は、西側から見た際に笈を背負った修験者に見える山容からきていると言われています。

歴史を紐解くと、泰澄上人が開いた霊場という説もあります。1905年（明治38年）には、陸地測量部による三角点設置の際に経塚が発見され、経筒や仏像、鏡、短刀、鏃など数多くの遺物が発掘されました。これら出土品の中には、「永正十五」（1518年）の年号が記された経筒もあり、古くから修験道の聖地として崇められていたことがうかがえます。1962年（昭和37年）には白山国立公園の特別保護地区に指定され、その自然環境の重要性が改めて認識されました。1968年（昭和43年）には、深田久弥氏が日本山岳会の協力を得て、中宮温泉からのルートで登頂を果たしています。

登山のルートと周辺環境

一般的な登山道はないものの、春先の積雪期には、いくつかのルートが利用されます。

石川県白山市の北陸電力中宮発電所付近から山毛欅尾山（ぶなおやま）、冬瓜平（かもうりだいら）、シリタカ山を経由するルート
時期によっては、白山自然保護センター駐車場から冬瓜山を経由し、上記のルートに合流するルートも利用可能です。（駐車場は夜間閉鎖の場合あり）
白山白川郷ホワイトロード三方岩駐車場から県境沿いのルート
大笠[[山]]から県境沿いのルート（廃道化している）


笈ヶ岳は、両白山地の主稜線北部に位置する痩せ尾根上のピークで、山頂の南には「小笈」と呼ばれる小ピークがあります。北側には宝剣岳や錫杖岳といった岩峰が連なり、北西側には千丈平という広大な平坦地が広がっています。南西方向には冬瓜山や山毛欅尾山へと尾根が伸びています。

笈ヶ岳から流れ出る主な河川は、境川（庄川の支流）、雄谷、蛇谷（尾添川の支流）などであり、いずれも日本海へと注いでいます。

笈ヶ岳は、その険しさゆえに容易に登れる山ではありませんが、その挑戦的な地形と絶景は、多くの登山家を惹きつけ続けています。 白山国立公園という豊かな自然環境の中で、歴史と神秘を秘めた笈ヶ岳は、日本の山岳文化を象徴する存在と言えるでしょう。

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