符天暦

符天暦（ふてんれき）

符天暦は、中国の唐の時代の建中年間（780年 - 783年）に曹士蔿（そうしい）によって編纂された暦法です。官暦として採用されることはありませんでしたが、その計算方法は後世の暦法に大きな影響を与え、中国や日本において民間の占星術に広く用いられました。

概要

符天暦は、従来の三統暦以来の上元積年法（暦元を遠い過去に置いて計算する方法）を採用せず、近距法を用いています。具体的には、顕慶5年（660年）の雨水を暦元とする、より近い過去を基準点とした計算方法を採用しました。また、定数の分母を1万とする万分法を用いて、1太陽年を365+2448/10000日としました。この万分法は、五代、後晋の調元暦や、元の授時暦にも採用されています。また、その中心差の計算方法は、唐末の崇玄暦に影響を与えたとされています。

さらに、符天暦はインド暦の影響を受けており、九曜（日・月・五星・羅睺・計都）の運行位置などが計算されました。この要素が占星術と結びつき、民間での普及を促進しました。

受容と利用

符天暦は日本にも伝来し、天台宗の僧侶である日延によって輸入されました。符天暦は天台宗などの密教と結びつき、宿曜道に取り入れられました。室町時代の摂関である一条兼良の説によれば、天徳2年（958年）に符天暦が採用され、当時においても暦道が公式の暦である宣明暦とともに研究していたとされています。この記述を裏付ける確固たる証拠は不足していますが、『小右記』などの記録から、暦道と宿曜道が協力して暦を作成していた時期があったことが確認されています。また、延応2年（1240年・仁治元年）の具注暦（前田育英会所蔵『江談抄』紙背文書）に記載された同年10月16日の月食予報の記述には、符天暦の数式が付記されています。これらのことから、符天暦は公式な暦として採用されなかったものの、暦の修正などの際に資料として用いられていたと考えられています。

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