第三のローマ

第三のローマとは

「第三のローマ」とは、歴史的にいくつかの国や勢力が自らを「第一のローマ（古代ローマ）」、「第二のローマ（コンスタンティノープル、ビザンツ帝国）」の後継者であると主張した際に用いられた概念です。この称号を主張した国々は、政治的、宗教的な正当性を示し、自らの権威を高めることを目的としていました。

主な主張者とその背景

ロシア（モスクワ大公国、ロシア帝国）

最も有名な「第三のローマ」の主張は、15世紀から16世紀にかけてモスクワ大公国で形成されました。コンスタンティノープルの陥落後、東方正教の中心としてのモスクワの地位を高め、正教徒の結束を促すとともに、モスクワ大公（後のツァーリ）の権威を確立しようとしたのです。

僧フィラフェイは、「二つのローマが倒れ、第三のローマが勃興した。そして第四はないだろう」と述べ、モスクワ大公国が正教世界の中心であることを強調しました。

オスマン帝国

1453年にコンスタンティノープルを陥落させたオスマン帝国のメフメト2世は、「カイセリ・ルーム（ローマ皇帝）」を名乗り、ローマ帝国の継承者であることを主張しました。メフメト2世は、コンスタンティノープルこそがローマ帝国の正当な継承地であるとし、自らの権威を高めようとしました。

ギリシャ王国

ギリシャ独立戦争後、ギリシャ王国はビザンツ帝国の領土を再建するという「メガリ・イデア」を掲げました。イオアニス・コレティス首相は、「第三のローマ」に言及し、コンスタンティノープルを首都とする大ギリシャの実現を目指しました。

ブルガリア帝国

第一次ブルガリア帝国のシメオン1世は、コンスタンティノープル総主教によって皇帝として戴冠され、「ブルガリア人とローマ人の皇帝」を名乗りました。これは、ローマ帝国の伝統と正統性を主張するものでしたが、ビザンツ帝国からは承認されませんでした。

セルビア帝国

セルビア王ステファン・ウロシュ4世ドゥシャンは、自らをツァーリと称し、「セルビア人とギリシア人の皇帝」という称号を用いました。この称号は、ギリシア人への支配権の主張とともに、ローマ帝国の伝統の継承を示すものでした。

神聖ローマ帝国

西ヨーロッパでは、神聖ローマ帝国が西ローマ帝国の継承者であると主張しました。カール大帝がローマ皇帝として戴冠されたことに始まり、神聖ローマ帝国はローマ帝国の権威を受け継ぐ存在として認識されました。

その他の主張

上記の他にも、フランス帝国やイタリア王国など、様々な国や勢力が「第三のローマ」の概念を利用し、自らの正当性や権威を高めようとしました。

「第三のローマ」の意義

「第三のローマ」の概念は、それぞれの国や勢力が自らのアイデンティティを確立し、権威を高めるために利用されました。この概念は、歴史的な出来事や政治的な状況と深く結びついており、各国の歴史や文化を理解する上で重要な要素となっています。また、現代においても、この概念はナショナリズムや政治的な議論において引用されることがあります。

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