第三次ホムスの戦い

第三次ホムスの戦い：モンゴル帝国とマムルーク朝の激突

1299年、中東レヴァント地方でモンゴル帝国とマムルーク朝の間で発生した第三次ホムスの戦いは、両勢力の覇権をかけた一大決戦でした。この戦いは、ワーディル・ハズナダールという地名でも知られており、モンゴルの圧倒的な勝利によって幕を閉じます。

戦いの背景

この戦いの背景には、70年近く前に遡るモンゴル軍によるレヴァント侵攻の歴史があります。1260年、フレグ・ハン率いるモンゴル軍はパレスチナ侵攻を目指しましたが、モンケ・カアンの死による後継問題でモンゴルへ召還され、撤退を余儀なくされました。残された防衛軍はアイン・ジャールートの戦いでマムルーク朝に敗北し、レヴァント地方からの撤退を余儀なくされました。

その後、フレグ・ハンは再侵攻を試みましたが、ジョチ・ウルスのベルケとの内戦に巻き込まれ、その計画は頓挫します。マムルーク朝はレヴァントを回復後、周辺諸国への侵攻を試みましたが失敗し、勢力範囲はシリアに限定されました。

時が流れ、1299年。ガザン・ハン率いるモンゴル軍6万とグルジア・アルメニア兵4万の総勢10万の大軍は、ユーフラテス川を渡河、アレッポを占領し、南下を開始しました。一方、マムルーク朝のスルタン、ナースィル・ムハンマドは2～3万の兵を率いてダマスカス北方へ進軍し、ホムスの北東でモンゴル軍と対峙しました。

激戦

12月22日の早朝、太陽が昇った頃、戦闘は始まりました。マムルーク騎兵隊の奇襲攻撃から始まる激戦は、両軍の白兵戦へと発展していきました。モンゴル軍の弓騎兵による矢斉射、重騎兵による突撃がマムルーク軍を圧倒します。戦闘は午後まで続き、マムルーク軍右翼の崩壊をきっかけに、全軍は総崩れとなりました。モンゴル軍は戦場を制圧し、マムルーク軍はダマスカスへと敗走しました。

戦いの結果とその後

マムルーク朝側の記録では、モンゴル軍の損害は5000～1万、マムルーク軍の損害はわずか200名とされています。この記録の信憑性は疑問視されていますが、マムルーク軍の敗北は明白です。ダマスカスへ撤退したマムルーク軍は、地元住民の抵抗にも遭い、モンゴル軍はガザ付近まで追撃しました。

ダマスカスを占領したモンゴル軍は、都市を略奪し、城砦を包囲しました。しかし、この勝利をきっかけとしたキリスト教諸国との協調は実現せず、マムルーク朝はすぐにレヴァント地方の奪還を開始しました。モンゴル軍はパレスチナを圧迫し、エルサレムに到達するも、飼料不足により撤退を余儀なくされました。

戦いの意義

第三次ホムスの戦いは、モンゴル帝国とマムルーク朝という強大な勢力間の最後の大きな戦闘の一つであり、モンゴル軍の圧倒的な勝利は、レヴァント地方における両勢力の勢力図を大きく変えました。この戦いは、中世後期の軍事史、政治史において重要な出来事であり、その影響は後世にまで及んだと言えるでしょう。 様々な一次資料、歴史家の研究などを参考に、この戦いの詳細をより深く理解することで、中世中東の歴史をより深く理解することに繋がるでしょう。

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