第三次メッセニア戦争

第三次メッセニア戦争：スパルタを揺るがした反乱

紀元前464年から454年にかけて、スパルタを揺るがす大規模な反乱、第三次メッセニア戦争が勃発しました。メッセニア人を中心としたヘロットとペリオイコイ（スパルタの周辺住民で、スパルタ市民ではない自由民）が、スパルタ支配層であるスパルタ人に対して蜂起したのです。

この反乱の背景には、紀元前464年に発生した大地震がありました。ラコニア地方を襲ったこの大地震は、スパルタに甚大な被害をもたらし、2000人以上の犠牲者と多くの倒壊家屋を出しました。スパルタの権力は地震によって弱体化し、支配に対する不満が高まっていたヘロットとペリオイコイにとって、反乱を起こす絶好の機会となりました。

さらに、スパルタは同時期にタソスからの援軍要請を受けており、軍事的な負担を抱えていました。この状況を巧みに利用し、メッセニア人を中心とした反乱軍はイトメ山に立てこもり、スパルタへの挑戦を開始したのです。

イトメ山での包囲戦は長期化し、スパルタは苦戦を強いられました。反乱軍を鎮圧するため、紀元前462年にはアテナイに援軍を要請。キモン率いるアテナイ軍が到着し、戦局に変化をもたらすかと思われましたが、イトメ山を陥落させるには至りませんでした。スパルタは、アテナイ軍の行動を警戒し、同盟関係を維持しつつもアテナイ軍を撤退させました。この対応は、親スパルタ派のキモンの政治的立場を大きく弱体化させる結果となりました。

ヘロドトスの記録によると、この戦争中にはステニュクレロスで激戦が繰り広げられ、メッセニア軍はスパルタの勇士、アリムネストス（プラタイアの戦いでマルドニオスを討ち取った人物）とその部下300名全滅させるという戦果を挙げました。この戦いは、メッセニア軍の戦闘能力の高さを示すものであり、スパルタにとって大きな打撃となりました。

10年に及ぶ包囲戦の後、反乱軍はペロポネソス半島からの追放という条件でスパルタと講和しました。しかし、これはスパルタの完全な勝利とは言い切れません。アテナイは、スパルタによるキモンへの屈辱的な扱いへの報復として、メッセニア人をナウパクトスに入植させました。このナウパクトスのメッセニア人は、後のペロポネソス戦争において、スパルタに対して大きな役割を果たすことになります。

第三次メッセニア戦争は、スパルタの支配体制に大きな亀裂を生じさせ、アテナイとの関係にも影響を与えた重要な出来事でした。地震という自然災害と、ヘロットとペリオイコイの反乱という社会問題が複雑に絡み合い、古代ギリシアの歴史を大きく動かす要因となったのです。この戦争の経緯は、ディオドロスの『歴史叢書』、トゥキュディデスの『歴史』、そしてヘロドトスの『歴史』といった古代の歴史書によって伝えられています。これらの史料は、戦争の詳細だけでなく、当時の人々の政治的思惑や社会情勢を知る上で貴重な情報源となっています。

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