第二次イーペル会戦

第二次イーペル会戦：毒ガスが戦場を覆った悲劇

第一次世界大戦中、1915年4月22日から5月25日にかけて、ベルギーのイーペル周辺で第二次イーペル会戦が繰り広げられました。これは、前年の秋に連合軍に奪われたイーペルを再び奪還しようとするドイツ軍の攻勢でした。この戦いは、人類史上初めて戦線レベルで大規模な毒ガス攻撃が行われたことで知られています。

戦いの背景

第一次世界大戦が膠着状態に陥る中、ドイツの科学者ヴァルター・ネルンストは、塹壕戦を打破する方法を模索していました。彼は、軍参謀のマックス・バウアー大佐に、催涙ガスによる奇襲を提案しました。その後、フリッツ・ハーバーが、より効果的な塩素ガスの使用を提唱しました。ドイツ軍司令官エーリッヒ・フォン・ファルケンハインは、この新兵器の試用を許可しましたが、当初は陽動作戦としての使用を考えていました。これは、東部戦線への部隊移動を隠蔽する目的もありました。

ガス放出には、液体の塩素ガスをシリンダーから噴霧する方法が用いられましたが、バルブが凍結する問題が発生し、風を利用してガスを敵陣に送り込む方式に変更されました。合計5730本のガスボンベが前線に運び込まれ、中には40キログラムにもなるものもありました。ガスボンベの設置は、ハーバーをはじめとする科学者たちが監督しましたが、作業中に砲撃でシリンダーが破壊され、死傷者を出す事故も発生しました。

攻撃場所として選ばれたのは、イーペル稜線でした。この高地は、運河に沿ってイーペルの東側を取り囲むように位置しており、北側はベルギー軍、南側はフランス軍が守備していました。中央部には、イギリス第二軍の第二軍団と第五軍団が展開しており、騎兵師団やカナダ師団なども含まれていました。

戦闘の経過

イギリス軍の中尉E・A・ジェームズは、著書『フランドルにおける 1914～1918 年の英仏軍の交戦記録』で、第二次イーペル会戦を構成する主要な戦闘を以下のように記録しています。

グラーヴェンシュターフェルの戦い (4月22日～23日)
サン・ジュリアンの戦い (4月23日～5月4日)
フレゼンベルクの戦い (5月8日～13日)
ベルワールの戦い (5月24日～25日)

特に、1915年4月22日の午後5時頃、ドイツ軍はランゲマルク村からグラーヴェンシュタフェル村にかけての6.5キロメートルに渡り、171トンの塩素ガスを放出しました。このガス攻撃により、フランス軍は2,000～3,000人の死傷者を出し、800～1,400人が死亡するという甚大な被害を受けました。前線が崩壊する事態となりました。

戦いの影響

第二次イーペル会戦は、毒ガス兵器が戦場に与える影響を明確にした戦いでした。これにより、毒ガス兵器の使用は第一次世界大戦を通じて拡大し、その後の戦争にも影響を与えることとなりました。イーペルは灰塵と化し、多くの命が失われました。この戦いは、科学技術が戦争に与える影響を深く考えさせる出来事となりました。

参考文献

Spencer Jones Battles of Ypres
Kitchener's Wood Memorial
Second Battle of Ypres Overview
Historical film documents on the Battles of Ypres
Order of Battle
Chlorine, Ucc.ie
4th Territorial Battalion, Northumberland Fusiliers
Legion Magazine Online

外部リンク

英語版記事
ドイツ語版記事

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