第二次スーダン内戦

第二次スーダン内戦：22年間続いた悲劇とその背景

1983年、スーダンは大きな転換期を迎えました。当時のヌメイリ政権がイスラム法を国政に導入したのです。この決定は、南部に暮らす非アラブ系住民、主に黒人でアニミズムやキリスト教を信仰する人々にとって、受け入れがたいものでした。長年の民族・宗教対立に火をつけ、第二次スーダン内戦が勃発したのです。

この内戦は、およそ22年に渡り続き、その間、約250万人が命を落とし、400万人以上が国内避難民となり、80万人以上が隣国へと逃れました。特に、南部のヌエル族やディンカ族の子どもたち約2万人が故郷を追われ、「ロストボーイズ」「ロストガールズ」と呼ばれる集団避難民となりました。この内戦の傷跡は、現在もスーダンの社会に深く刻まれています。

内戦の遠因：歴史的背景と資源争奪

この内戦の根底には、長い歴史的経緯と資源問題がありました。スーダンは、古くからナイル川沿岸を拠点とする王国や列強による支配と搾取を受けてきました。イギリスによる植民地支配時代には、南北が分断され、北部はエジプトとの共同統治下でアラビア語が公用語となり、南部は他の東アフリカ植民地と同様に管理されました。この分断は、南北間の経済的、文化的交流を阻害し、民族間の溝を深めていきました。

1946年のイギリスによる南北統合後も、北部勢力の支配が続き、南部住民の不満は高まりました。1955年には、第一次スーダン内戦が勃発。1972年のアディスアベバ合意で一時終結したものの、根本的な問題は解決されませんでした。

さらに、南部のコルドファン地方で発見された豊富な油田は、内戦の新たな火種となりました。石油収入はスーダンの輸出所得の約70％を占め、この資源の支配権をめぐる北部と南部の対立は激しさを増していきました。南部の豊かな水資源と肥沃な土地も、資源争奪の要因の一つでした。

内戦の引き金：シャリーア法導入

1983年、ヌメイリ政政権はイスラム化政策の一環として、シャリーア法を導入しました。南部住民にとって、これは自らの文化と信仰を否定する行為に等しく、激しい反発を招きました。シャリーア法導入は、ムスリム集団の間でも議論の的となり、イスラム教指導者であるサーディク・アル＝マフディーは自宅軟禁に置かれました。ヌメイリ政権による非常事態宣言とシャリーア法の拡大は、内戦再開の決定的な引き金となったのです。

スーダン人民解放軍(SPLA)の台頭と内戦の激化

1983年、ジョン・ガラン率いるスーダン人民解放軍/運動(SPLA/M)が結成されました。SPLAは「新スーダン」建設を掲げ、ソ連とエチオピアの支援を受けながら、政府軍と激しい戦闘を繰り広げました。サルバ・キール・マヤルディが戦闘指揮を執るようになり、SPLAは組織力を強化しました。

ヌメイリ政権の崩壊後も、スーダンは政情不安が続き、ウンマ党のサーディク・アル＝マフディー政権、そして1989年のクーデターでオマル・アル＝バシール政権が誕生しました。バシール政権は、イスラム主義路線を強め、SPLAとの戦闘はさらに激化しました。1991年のエチオピア政変でSPLAの支援が失われるなど、情勢は複雑さを増していきました。ディンカ族とヌエル族の抗争も内戦に影を落としました。

平和合意と南スーダンの独立

長年に渡る戦闘と和平交渉を経て、2005年1月9日、スーダン政府とSPLAは包括的和平合意(CPA)に調印しました。CPAは、6年間の暫定統一政府、南部の自治政府設置、独立の是非を問う住民投票などを盛り込んでいました。

2011年、南スーダン独立住民投票が行われ、圧倒的多数で独立が承認されました。同年7月9日、南スーダン共和国が独立を宣言しました。しかし、独立後も、ディンカ族とヌエル族の対立など、新たな問題が発生し、スーダンの和平は依然として脆弱な状態にあります。第二次スーダン内戦は、その悲劇的な歴史と、現在も続くスーダンの課題を私たちに突きつけているのです。

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