第二次世界大戦中のスペイン

第二次世界大戦下のスペイン

第二次世界大戦中、スペインはフランシスコ・フランコ総統の指導の下、複雑な立場を歩みました。スペイン内戦終結後、フランコ政権はドイツやイタリアの支援を受けて成立し、防共協定にも参加していたため、当初は親枢軸国と見なされていました。

戦争前夜

しかし、スペインは内戦による疲弊が深刻で、経済も停滞していました。また、地政学的に連合国と枢軸国の両方との関係を維持する必要があり、アメリカからの資源供給にも依存していました。一方で、イベリア半島南端のジブラルタルは地中海の要衝であり、スペインにとって奪還を目指す重要な地点でした。

枢軸国参加交渉

1939年のドイツによるポーランド侵攻は、スペインに衝撃を与えました。スペインは中立を宣言し、ソ連の東ポーランド占領を非難しましたが、ソ連の西方進出を防ぐため、ドイツと連合国に講和を呼びかけました。

1940年6月のフランス降伏後、スペインは枢軸国寄りの政策を強め、中立を放棄して「非交戦」を宣言しました。これは事実上の準枢軸国としての立場を示すものでした。スペインは国際管理都市タンジェを占領し、スペイン領モロッコに併合しました。当時のスペインは、イギリスの敗北が近いと見て、対英戦への参戦を視野に入れていました。

しかし、アドルフ・ヒトラーは当初フランコに対し冷淡でした。バトル・オブ・ブリテンでのドイツの敗北後、ヒトラーは地中海と北アフリカにおける戦略的要衝であるジブラルタルを攻略するため、スペインを枢軸国陣営に引き込むことを考え始めました。スペインは、ジブラルタルとフランス領モロッコ、アルジェリア、西アフリカの一部割譲を要求しましたが、ドイツはフランス植民地の割譲を拒否しました。また、スペインが要求する経済・軍事支援も実現せず、スペイン領モロッコとカナリア諸島の軍事拠点をドイツに割譲する案はスペインの反発を招きました。

1940年10月、フランス・スペイン国境のアンダイエでヒトラーとフランコの会談が行われました（アンダイエ会談）。ヒトラーはフランス植民地の割譲を拒否する一方で、戦後に入手するイギリス植民地によって調整が可能であるとフランコを説得しました。フランコは最終的に、独伊鋼鉄同盟への加入を秘密議定書で宣言し、戦争準備に必要な支援を受けることを条件に、将来における戦争参加を確約しました。しかし、ドイツ国防軍が1941年1月10日に進駐すると通告しましたが、スペインが動くことはなく、12月には近い将来に参戦することはないと言明しました。1941年2月、フランコはヒトラーに書簡を送り、アンダイエ会談の議定書は効力を失ったものと見なすと通告しました。その後、枢軸側は北アフリカやバルカンで勝利を収めましたが、スペインは曖昧な態度を取り続けました。

枢軸国支援

スペインは枢軸国に協力的な姿勢をとり続けました。スペイン領海におけるドイツ海軍艦艇の補給を許可し、独伊の諜報活動に協力しました。ドイツ国防軍情報部長官のヴィルヘルム・カナリスは、スペインとの協力関係を築き、スペイン諜報部が入手した情報を枢軸国に提供しました。真珠湾攻撃後は日本もこの諜報網に参加しました。

青師団

独ソ戦が始まると、スペインは義勇兵を派遣し、第250歩兵師団（青師団）として東部戦線で戦わせました。しかし、1943年になると、スペイン国内で師団の帰還を求める声が高まり、連合国からの要求もあって、帰国命令が出されました。

戦争後期

日本によるマレー作戦と真珠湾攻撃はスペインでも熱狂的に取り上げられましたが、アメリカはスペインの親枢軸的な行動に不信感を抱き、石油の輸出を監視する措置をとりました。また、ドイツへのタングステン輸出も制限しました。

1942年頃から、フランコはドイツと連合国の講和を仲介する動きを見せましたが、連合国側に拒否されました。1943年9月にイタリアが降伏すると、スペインは非交戦放棄を宣言し、連合国寄りの姿勢を明確にしました。しかし、枢軸国による諜報活動への協力は続いており、1944年にはアメリカによる石油禁輸措置がとられました。

1945年1月のマニラの戦いでは、日本軍とアメリカ軍の戦闘に巻き込まれたスペイン人が多数死亡し、スペイン政府は日本に賠償を請求しましたが、拒否されました。4月12日、スペインは日本と断交しました。

戦後

第二次世界大戦を切り抜けたスペインでしたが、アメリカとフランスはフランコ政権の打倒を図り、国際連合への加盟も拒否されました。冷戦が激化する1948年になってようやく、アメリカとフランスはスペインとの貿易関係を再開しました。またスペインは戦後、連合国により戦犯容疑をかけられた元ナチス政府高官やドイツ軍将官が、元スペインの植民地であったアルゼンチンやチリ、ブラジルなどの南アメリカ諸国に逃亡する際の中継地となりました。

このように、第二次世界大戦中のスペインは、複雑な国際情勢の中で独自の立場を維持し、戦争に翻弄された時代を生き抜いたのです。

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