第10独立山岳強襲旅団 (ウクライナ陸軍)

第10独立山岳強襲旅団の概要

第10独立山岳強襲旅団は、ウクライナ陸軍に所属する精鋭部隊であり、西部作戦管区の指揮下で活動しています。この旅団は、山岳地帯での戦闘に特化した訓練を受けており、過酷な環境下での作戦遂行能力に長けています。2015年のドンバス戦争勃発を機に、山岳部隊としての必要性が高まり、第10独立山岳歩兵連隊としてイヴァーノ＝フランキーウシク州で創設されました。その後、部隊の増強に伴い、第10独立山岳強襲旅団へと改編されました。

ドンバス戦争での活躍

2016年1月には、第8独立自動車化歩兵大隊（後に第8独立山岳強襲大隊に改称）が第24独立機械化旅団から配属され、戦力が強化されました。さらに、同年3月には、東部作戦管区から第24独立突撃大隊アイダール、第46独立特務大隊ドンバス・ウクライナが編入され、旅団はより大規模な作戦に対応できる体制となりました。

2016年5月から、旅団はドンバス戦争に投入され、東部ドネツィク州やルハーンシク州の前線で激しい戦闘を経験しました。同年8月には、ペトロ・ポロシェンコ大統領から軍旗を授与され、部隊の士気が大いに高まりました。同年11月には、第24独立突撃大隊アイダール、第46独立特務大隊ドンバス・ウクライナが東部作戦管区隷下に戻りましたが、同年12月には新たに第108独立山岳強襲大隊、第109独立山岳強襲大隊が新編され、旅団の戦力は維持されました。

2018年8月には、第8独立山岳強襲大隊、第108独立山岳強襲大隊、第109独立山岳強襲大隊がそれぞれ軍旗を授与され、旅団隷下の全独立部隊が軍旗を授与されるという、ウクライナ軍初の快挙を達成しました。

ロシアのウクライナ侵攻における戦い

2022年2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻では、第10独立山岳強襲旅団も最前線に投入され、各戦線で激戦を繰り広げました。

北部・キーウ戦線:

侵攻初期、第8独立山岳強襲大隊、第108独立山岳強襲大隊、第109独立山岳強襲大隊は戦略予備としてキーウ州に配備され、3月にはロシア軍に対する反撃を開始しました。4月上旬にはロシア軍がキーウ州から撤退し、旅団はキーウ防衛に貢献しました。

東部・マリウポリ戦線:

2月下旬には、東部ドネツィク州マリウポリに配備され、マリウポリ港の一部を防衛していました。しかし、市街地が制圧され、ウクライナ軍がアゾフスタリ製鉄所に籠城する前に撤退しました。その後、5月中旬にはマリウポリが陥落しました。

北部・チェルニーヒウ戦線:

4月上旬には、第8独立山岳強襲大隊が北部チェルニーヒウ州チェルニーヒウに配備され、ロシア軍はチェルニーヒウから撤退しました。

東部・セベロドネツク戦線:

6月下旬には、第108独立山岳強襲大隊が東部ルハーンシク州セヴェロドネツィク地区リシチャンシクに配備されましたが、ロシア国防省は同大隊が戦死320人、捕虜30人の損害で全滅したと発表しました。

東部・バフムート戦線:

7月下旬には、第108独立山岳強襲大隊、第109独立山岳強襲大隊が東部ドネツィク州バフムート地区シヴェルシクに配備され、激戦を繰り広げました。11月には、バフムート地区ソレダルに配備されましたが、2023年1月中旬にソレダルは陥落しました。2023年2月には、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領から名誉称号「エーデルワイス」を授与されました。しかし、この称号に対しロシアのウラジーミル・プーチン大統領は「ヒトラーの師団のようだ」と批判し、ロシア外務省も「ウクライナにナチスがいる証拠だ」と主張しました。2023年5月5日には、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領から、勇気と勇敢さに対する栄誉賞を授与されました。

東部・スヴァトヴェ戦線:

2023年10月中旬には、第108独立山岳強襲大隊が東部ルハーンシク州スヴァトヴェ地区マキイフカに配備されました。

編制

第10独立山岳強襲旅団は、以下の部隊で構成されています。

旅団司令部（コロミア）
第8独立山岳強襲大隊（チェルニウツィー）
第108独立山岳強襲大隊（チェルニウツィー）
第109独立山岳強襲大隊（クリヒウツィー）
戦車大隊
自動車化歩兵大隊
旅団砲兵群
指揮情報中隊
榴弾砲大隊
自走砲大隊
ロケット砲大隊
対戦車砲大隊
対空ミサイル大隊
工兵大隊
整備大隊
補給大隊
偵察中隊
狙撃中隊
電子戦中隊
通信中隊
レーダー中隊
化学防護中隊
衛生中隊
エーデルワイス軍楽隊

出典

外部リンク
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