第12特務旅団 (ウクライナ国家親衛隊)

第12特務旅団：激戦地マリウポリを守り抜いた精鋭部隊

第12特務旅団は、ウクライナ国家親衛隊に所属していた旅団です。その起源はソ連時代に遡り、幾多の変遷を経て、ウクライナの独立、ドンバス戦争、そしてロシアのウクライナ侵攻といった歴史的転換期において重要な役割を担いました。

ソ連時代からウクライナ独立へ

1990年1月18日、ソ連国内軍の第129独立特殊自動車化警察大隊として、ウクライナ・ソビエト社会主義共和国のドネツィク州マリウポリで創設されました。ソ連崩壊後の1992年1月には、ウクライナ国家親衛隊に編入され、第4師団隷下の第10独立大隊に改編されました。その後、1995年1月にウクライナ国内軍に編入、第17独立特殊自動車化警察大隊へと改編されました。

ドンバス戦争での激戦

2014年3月、ウクライナ国内軍の廃止に伴い、再びウクライナ国家親衛隊に編入されました。同年4月、ドンバス戦争勃発により、東部ドネツィク州マリウポリに配備され、親ロシア派分離主義勢力との戦闘に投入されました。2014年11月には、特殊任務巡回警察のアゾフ連隊が配属され、部隊増強に伴い第18特務連隊へと改編されました。2015年4月には、第2特務大隊ドンバスが配属され、戦力増強が図られました。2016年9月には、ドンバス大隊が第15独立連隊隷下に移管されました。2018年3月24日には、ペトロ・ポロシェンコ大統領から、名誉称号「ドミトロ・ヴィシネヴェツキー」が授与され、部隊の歴史に新たな１ページを刻みました。そして2019年10月、更なる部隊増強を経て、第12特務旅団へと改編されました。

ロシアのウクライナ侵攻：マリウポリでの壮絶な戦い

2022年2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻が開始されると、第12特務旅団は南東部の要衝であるマリウポリに配備され、ウクライナ海軍の第36独立海軍歩兵旅団、ウクライナ陸軍の第56独立自動車化歩兵旅団、そしてアゾフ連隊の部隊などと共に、マリウポリ防衛戦の最前線に立ちました。特に、アゾフ連隊の第1大隊は共に市内の防衛にあたり、第2大隊はキーウに展開した後、東部ドンバスのどこかで戦闘に参加しました。国境警備隊や警察官と共に港湾地区での戦闘に加わり、2022年4月20日には、工業地区で戦闘していた第36独立海軍歩兵旅団、アゾフ連隊と合流し、アゾフスタリ製鉄所を拠点に、マリウポリの防衛任務を継続しました。

アゾフスタリ製鉄所での攻防戦は凄惨を極めましたが、第12特務旅団を含むウクライナ軍は、圧倒的な戦力差の中で粘り強く戦い続けました。2022年5月16日、ロシア国防省がアゾフスタリ製鉄所の負傷兵の避難に合意したと発表し、ウクライナ軍参謀本部も「マリウポリの守備隊は司令部が命じた全ての任務を完遂した」と発表し、マリウポリの守備隊に撤退を命令しました。その結果、人道回廊が設置され、260名以上のウクライナ兵が製鉄所から避難しましたが、投降した捕虜としてロシア軍の支配地域に移送されることとなりました。

2022年10月27日、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領から、その勇気と勇敢さに対して栄誉賞が授与され、第12特務旅団の兵士たちの勇猛果敢な戦いが称えられました。

解隊とアゾフ連隊への継承

2023年1月、アゾフ連隊は部隊増強を経て第12特務旅団アゾフに改編され、第12特務旅団の旅団番号を継承しました。これに伴い、第12特務旅団は、その歴史に幕を閉じました。

編制

第12特務旅団は、以下のような編制を有していました。

旅団司令部（マリウポリ）
第1パトロール大隊
アゾフ特殊作戦分遣隊（マリウポリ）
特別パトロール中隊
* 小銃中隊（予備役）

第12特務旅団は、幾多の変遷を経て、ウクライナの歴史の重要な局面において、常に最前線で戦い続けた精鋭部隊でした。特にマリウポリ防衛戦における彼らの勇敢な戦いは、多くの人々の記憶に刻まれています。

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