第20期本因坊戦

第20期本因坊戦：坂田栄男、5連覇達成

第20期本因坊戦は、1964年に挑戦者決定リーグ戦が始まり、1965年4月から本因坊栄寿（坂田栄男）に山部俊郎九段が挑戦する七番勝負が行われました。結果は坂田本因坊が4連勝で山部九段を降し、見事5連覇を達成しました。この勝利により、坂田は高川格に続いて、引退後に名誉本因坊を名乗る資格を得ました。

対局方式

本因坊戦には、日本棋院および関西棋院に所属する初段以上の棋士が参加資格を有していました。予選は、日本棋院と関西棋院でそれぞれ1次予選、2次予選が行われ、勝ち抜き者による合同3次予選で4名の新規リーグ参加者を決定します。挑戦者決定リーグ戦は、前期シード者と新たに選出された4名を加えた計8名で行われました。コミは4目半、持ち時間は、2次・3次予選が各6時間、リーグ戦が各9時間、挑戦手合が各10時間でした。

予選と挑戦者決定リーグ

予選トーナメントを勝ち抜き、新たにリーグ戦への参加を決めたのは、藤沢秀行九段、篠原正美八段、関西棋院の宮本直毅八段、そして初参加となる林海峰七段の4名でした。

挑戦者決定リーグ戦は、前期シードの高川格九段、木谷實九段、橋本宇太郎九段、山部俊郎九段に加え、上記の新規参加者4名を加えた8名で行われる予定でした。しかし、木谷實九段がリーグ戦開始直前に病気で倒れ、残念ながら欠場・リーグ陥落となりました。そのため、リーグ戦は7名で、1964年11月25日から翌年3月24日まで行われました。その結果、高川、橋本、藤沢、山部の4名が4勝2敗で並び、プレーオフに進出。山部がこのプレーオフを制し、見事初の挑戦権を獲得しました。

呉清源九段は、プレーオフ前に山部九段が麻雀が得意であることから、「四人で何かをすることは、何でも山部さんが上手ですよ」と予想し、その言葉が見事に的中しました。また、山部九段はリーグ戦中に母親を亡くされ、その葬儀のために高川-山部戦が1週間延期されるという出来事もありました。

挑戦手合七番勝負

坂田本因坊に山部俊郎九段が挑戦する七番勝負は、1965年4月に開幕しました。過去に3度の準優勝経験を持つ山部九段は、悲願のタイトル獲得に向けて、「せっかく得た挑戦権だから、ここで坂田さんと精一杯ぶつかり、その碁から何かを吸収したい」と意気込みを語っていました。後援会による激励会では、「坂田さんの強さがどういうものか、じっくり見物したいと思います」と挨拶し、静かに闘志を燃やしていました。

第1局は三重県二見町の朝日館で行われました。観戦記者の榊山潤氏は、「山部九段の登場は今期の本因坊戦に新鮮な色彩を与え、その興味を倍化させる。内に秘めた未知数の力がこの機会に発揮されれば、当代坂田本因坊を打ち破るかもしれない」と期待を込めました。しかし、山部九段は中盤で白の痛撃を受け、自身の碁風とは異なる消極的な手を打ってしまい、坂田本因坊が178手で中押し勝ちしました。

第2局は秋田県湯瀬温泉の湯瀬ホテルで行われました。山部九段は上辺での攻め合いを選択しましたが、坂田本因坊が冷静に対応し、129手で黒中押し勝ち。坂田本因坊が連勝しました。山部九段は対局前に風邪で体調を崩しており、対局中に医師の診察を受けるほどでした。

第3局は広島市三滝荘で行われました。「原爆下の対局」から20年目にあたることから、両対局者と当時ゆかりのあった瀬越憲作名誉九段、橋下宇太郎九段、三輪芳郎八段が特別参加し、対局前日に市内の西本願寺で原爆物故者法要が営まれました。対局では、山部九段が優勢な局面を迎えましたが、後半に坂田本因坊が追い上げ、逆転。154手で白中押し勝ちとなり、坂田本因坊が3連勝としました。

第4局は宮崎県えびの高原ホテルで行われました。山部九段は両目外しで開始し、中盤まで優勢に進めましたが、終盤でコウを仕掛けた際に誤りがあり、坂田本因坊が逆転。295手で黒8目半勝ちとなり、坂田本因坊が4連勝で本因坊位を防衛し、5連覇を達成しました。また、タイトル戦決勝で16連勝、本因坊戦七番勝負で10連勝という記録を打ち立てました。

一方、この年の名人戦では林海峰七段が坂田本因坊に挑戦し、タイトルを奪取。囲碁界に新旧交代の波が押し寄せました。

山部俊郎

山部俊郎は藤沢秀行、梶原武雄と並んで戦後派三羽烏と呼ばれ、1959年王座戦決勝、1962年日本棋院選手権戦挑戦、1964年囲碁選手権戦決勝に進出したがいずれも敗れており、初の大タイトル挑戦がかかっていた。

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