第4次沖縄抗争

第4次沖縄抗争は、1973年（昭和48年）から1981年（昭和56年）にかけて沖縄県で発生した、旭琉会と上原組（及びそれを支援する三代目山口組）との間で繰り広げられた抗争事件です。この抗争は、旭琉会の理事であった上原組組長の上原勇吉が、同会から謹慎処分を受けたことがきっかけとなり勃発しました。

抗争の背景

1968年頃、沖縄から本土に渡った神里恵男は、山口組系小西一家の小西音松総長の舎弟となります。これを受けて神里は尼崎市で親琉会を結成し、翌年には親琉会沖縄支部として国琉会を設立、国仲寛一を支部長に据えました。しかし、国琉会は間もなく琉球警察の手入れによって解散し、山口組の沖縄進出は一旦頓挫します。その頃、1969年 12月には、沖縄の暴力団を二分していた『山原派』と『沖縄派』が合併し、旭琉会の前身となる『沖縄連合琉球会』が結成されました。

本土復帰後の1973年、山口組若頭補佐の小田秀臣と織田譲二組長は、東亜友愛事業組合との交渉を経て、東亜友愛事業組合沖縄支部（宜保俊夫支部長）を山口組直系として沖縄への再進出を果たします。そのような状況下で、旭琉会理事の上原勇吉が謹慎処分を受け、これが一連の抗争の伏線となりました。

抗争の激化

1974年 9月、那覇市のバーで旭琉会幹部が上原勇吉の実弟と遭遇した際、同弟が旭琉会幹部への挨拶を怠ったことから喧嘩が発生。翌日、旭琉会側が上原組組員7人を拉致し、激しい暴行を加えます。これに対し同年10月24日、上原組組員の日島稔らが宜野湾市のクラブで旭琉会理事長の新城喜文を射殺。同年12月9日には旭琉会組員が、上原組幹部の山城長栄を刺殺し崖から投げ捨てるという事件が発生しました。

1975年 2月、旭琉会組員の友寄倉茂ら7名が、上原組組員の仲宗根隆、嘉陽宗和、前川朝春を拉致。旭琉会の仲本善忠会長は友寄らに拉致した3人の殺害を指示し、2月14日に友寄らは3人を国頭村の山中に連行します。その場で3人に2メートルの深さの穴を掘らせ、穴の中に3人を入れ、コルト45口径とコルト22口径の拳銃で射殺しました。嘉陽は瀕死の重傷を負いながらも穴から這い出しましたが、友寄らに短刀で何度も刺された上、こめかみを拳銃で撃たれて絶命しました。このリンチに対する報復として、上原組側は同年12月9日、仲宗根の実弟も参加して配下の組員にバイクで土佐犬の散歩中の旭琉会理事長の又吉世喜を車で追跡、拳銃で射殺しました。

山口組の介入と抗争の終結

事態を重く見た山口組は、沖縄進出に本腰を入れ始めます。1976年、山口組若頭補佐の大平一雄は、東亜友愛事業組合の仲本正弘・仲本正秀兄弟を養子とし、大平組舎弟頭の古川真澄を古川は沖縄県で「琉真会」を発足。さらに同年12月には、上原勇吉の実弟・上原秀吉が大平一雄の舎弟となり、上原組に琉真会＝山口組が加わることとなりました。

1976年 9月までに、沖縄県警察は旭琉會会長である仲本善忠を、1975年に行われた殺人、死体遺棄の容疑で指名手配。仲本は逃走しましたが同年10月1日、逃走先の大阪市内で逮捕されました。

1977年新春に琉真会の組員が旭琉会組員を捕らえて暴行を加えると、旭琉会側は同年5月13日に仲本正弘のボディガード2人を拳銃で銃撃、5月15日には旭琉会組員が上原秀吉の乗った車を銃撃、5月18日には上原組組員2人を拳銃で銃撃し1人を即死させもう1人に重傷を負わせるなど報復行動に打って出ました。

本土の暴力団も巻き込む事態に沖縄県警は、同年3月に「旭琉会対上原組・琉真会対立抗争事件取締本部」を設置。同年5月19日には応援に行かせた大平組組員24人を空港で機動隊に包囲させ水際で阻止しています。それでも8月11日に琉真会アジトが3階に入るビルを旭琉会組員が襲撃、警戒中の機動隊員1人を射殺し、アジトに手榴弾を投げ込み逃走しました。

1977年 9月、当時の警察庁長官・浅沼清太郎が山口組壊滅作戦を指示したことで、警察の全国的な暴力団殲滅体制が強化され抗争どころではなくなってきました。旭琉会側も仲本善忠会長が前述の国頭村での殺人死体遺棄事件で逮捕・無期懲役となり会長・理事長が不在となったこともあり、抗争は下火となります。そして1981年 7月、山口組二代目吉川組・野上哲男組長、二代目旭琉会・多和田真山、澄田組二代目藤井組・橋本実組長の三者が五分の兄弟分となり、旭琉会と山口組の抗争は一応の終結を見ました。

琉真会は古川組の傘下として尼崎市で存続していましたが、山口組の分裂に伴い任侠団体山口組を経て山口組司興業へ移籍しています。

無期懲役となっていた仲本善忠は、2019年頃に約90歳で獄死しました。

映画化

この抗争を題材とした映画も製作されています。

『沖縄やくざ戦争』 1976年（昭和51年）東映、監督：中島貞夫、主演：松方弘樹・千葉真一
『海燕ジョーの奇跡』 1984年（昭和59年）松竹、監督：藤田敏八、主演：時任三郎

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