第42回世界遺産委員会

第42回世界遺産委員会：バーレーン・マナーマで開催

2018年6月24日から7月4日にかけて、第42回世界遺産委員会がバーレーンの首都マナーマで開催されました。当初2011年にバーレーンでの開催が予定されていたものの、国内情勢の混乱により延期されていたため、同国にとって初の世界遺産委員会開催となりました。開催地は通常、前回の委員会で決定されますが、第41回委員会では立候補国がなく、ユネスコ総会でマナーマが選ばれました。会場はリッツ・カールトンの敷地内に設けられたユネスコ村でした。

登録された新たな世界遺産

この委員会では、文化遺産13件、自然遺産3件、複合遺産3件の合計19件が新たに世界遺産リストに登録され、世界遺産リストの総登録数は1,092件となりました。しかし、今回新たに世界遺産を保有する国は誕生せず、世界遺産条約締約国193か国のうち、依然として26か国が世界遺産を保有していない状況です。

審議された推薦物件

委員会では、多くの推薦物件が審議されました。物件名に「」が付いているものは、既存の登録物件の拡大登録を示しています。審議の結果、「登録」「情報照会」「登録延期」「不登録」の4段階の決議がなされました。

自然遺産

(具体的な登録物件については、詳細なリストを参照してください)

複合遺産

(具体的な登録物件については、詳細なリストを参照してください)

文化遺産

(具体的な登録物件については、詳細なリストを参照してください)

危機遺産と名称変更

今回は危機遺産リストからの除去や新規登録、再登録、そして名称変更も行われました。

名称変更

(具体的な変更内容については、詳細なリストを参照してください)

「イェリング墳墓群、ルーン文字石碑群と教会」（デンマーク）の名称変更は、ICOMOSの不承認勧告により見送られました。

その他の議題：世界遺産が直面する課題

委員会では、世界遺産を巡る多くの重要な議題が議論されました。

明治日本の産業革命遺産： 韓国が、日本政府が約束した朝鮮人強制連行に関する施設建設が実現していないと指摘し、議論が行われました。
エルサレム旧市街： イスラエルによるエルサレム旧市街の帰属主張は否決されました。
ヘブロン旧市街： パレスチナのヘブロン旧市街におけるマクペラ洞穴修復計画について、ユネスコの主導で中立的な立場で修復を行うことが合意されました。
ライフ・ビヨンド・ツーリズム： 遺産の商品化を超えた、文化交流を通じた世界遺産の保護を促進する「ライフ・ビヨンド・ツーリズム」が提唱されました。
ダム建設と世界遺産： ダム建設による世界遺産への影響が深刻化しており、水力発電や農業用貯水目的のダムが少なくとも33の世界遺産に影響を与えていることが報告されました。この問題に対し、国連の「国境なき水」を推進するNGOとのパートナーシップが締結されました。
遺産の資源利用： ユネスコ世界遺産センターと関係諮問機関が、遺産の資源利用に関する能力構築体制の強化を発表しました。
世界遺産教育： ヤングプロフェッショナルフォーラムが開催され、世界遺産の持続可能性について、特に途上国での安定雇用と社会参加の重要性が提言されました。
文化遺産の新たな判断基準： 文化遺産の登録審査に「特別な文化的または物理的重要性」という新たな判断基準の採用が検討されました。この基準の先例として、長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産が挙げられました。
モスルの復興： ISILにより破壊されたイラクのモスルに対し、将来的な世界遺産登録を前提とした復興が確約されました。
ディヤルバクル城塞： トルコによるディヤルバクル城塞の一部破壊疑惑が報告されましたが、トルコ政府が否定したため、明確な非難決議には至りませんでした。
スポーツインフラと世界遺産： 近年、スポーツインフラの整備が環境破壊を招いている事例が増えているため、国際オリンピック委員会などに注意喚起を行うことが決定されました。
アフリカの文化遺産： アフリカの世界遺産の文化多様性を重視し、部族単位の文化の差異に注目することが決定されました。

次回開催地

次回の第43回世界遺産委員会は、アゼルバイジャンのバクーで、2019年6月30日から7月10日に開催されることが決定しました。

その他の話題

開会式では、ユネスコ事務局長や理事会議長が挨拶し、世界遺産の重要性を訴えました。
バーレーンの王太子と首相が、世界遺産基金への資金提供を約束しました。
世界遺産の学術的精査のための調査費用が上昇しており、経済協力開発機構への協力を要請しました。
アメリカのNGO団体が世界遺産基金への直接支援を表明しました。
リアクティブ・モニタリングを補完する強化モニタリング体制として、オンライン調査システムが導入されました。
国際保険業協会連盟が、世界遺産のための保険設立を提案しました。
委員会の会場となったユネスコ村は、空間演出家によって手がけられましたが、閉会後に撤去されました。

委員会への批判

委員会は長期間にわたり、多くの議論が繰り広げられましたが、その運営や議題設定に対する批判も存在します。特に、水問題に関する議論は、委員会だけでなくユネスコ全体で長期的に検討すべき課題であるという指摘があります。また、委員会の開催費用が増大し、途上国での開催が困難になっている現状も問題視されています。

まとめ

第42回世界遺産委員会では、新たな世界遺産の登録だけでなく、世界遺産が直面する様々な課題が浮き彫りになりました。水資源問題、紛争による遺産破壊、そして持続可能な観光など、世界遺産を保護するための国際的な協力と、より長期的な視点での取り組みが求められています。

(参照文献リストは省略します)

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