遺産の商品化

遺産の商品化とは

遺産の商品化とは、有形・無形の文化財や自然環境などの遺産を、文化経済的な価値を持つ商品として利用する行為を指します。これは、主に観光業における観光開発として行われ、ヘリテージツーリズムという形で顕著に見られます。

商品化の具体例

最も顕著な例として挙げられるのが世界遺産です。世界遺産に登録されると、そのブランド力から観光客が急増し、大きな経済効果をもたらします。日本においても、文化庁が推進する日本遺産制度や、国宝である迎賓館の通年公開などが遺産の商品化の成功例として挙げられます。

また、美術館や博物館の展示物、地域に伝わる祭りや伝統芸能なども観光資源として活用され、商品化されています。観光客向けのお土産菓子なども、遺産の商品化から派生した副産物と言えるでしょう。

さらに、一次産業では農業遺産登録地での農産物のブランド化、二次産業では伝統工芸を活かした製品開発なども遺産の商品化に含まれます。現代都市においても、都市文化を都市遺産として顕彰し、観光資源として活用する動きがあります。

ユネスコの取り組み

ユネスコは、本来、遺産の厳正な保護を目的としていましたが、2002年の国連文化遺産年を機に、遺産を社会問題意識の醸成、途上国での雇用確保、保全費用の捻出に活用するという方針を打ち出しました。世界[[観光機関]]（UNWTO）などと連携し、「世界遺産と持続可能な観光プログラム」を策定し、以下の7つのガイドラインを提示しています。

1. 観光に対処できるだけの管理能力の育成
2. 遺産地域の人々が観光産業に参加し恩恵を享受する
3. 遺産周辺地域の商品を市場へ送り出す手助けをする
4. 教育を通じて遺産に対する保護意識を喚起する
5. 観光収益を遺産の保護費用に充てる
6. 他の地域の遺産と経験を共有する
7. 観光関係者の意識向上を促す

これらのガイドラインを遵守することで、観光による遺産の保護と活用の両立を目指しています。

商品化における問題点

遺産の商品化には、以下のような問題点も存在します。

粗悪な商品: 遺産の価値が疑わしい場合、商品化したものの価値も損なわれます。また、文化的な要素を誇張したり、偽の文化を本物のように扱うことも問題視されています。
偽の商品: 模倣建造物や贋作は、受け手側が認識していれば問題ない場合もありますが、美術館や博物館における贋作は深刻な問題です。また、レプリカを周知せずに展示したり、誇大広告を行うことは、消費者を欺く行為につながります。
商品の遺産化の難しさ: 観光開発された場所を改めて遺産化することは難しく、交通渋滞や景観の悪化などの問題も生じます。
自然の商品化のリスク: 自然の商品化は、環境破壊や生物多様性の損失などのリスクを伴います。国立公園での長期滞在やリゾート開発は、自然環境への影響を考慮する必要があります。
観光公害: 遺産の商品化は、観光公害を引き起こす可能性があります。インフラ整備や雇用のために外資系企業が参入すると、地域経済への還元が弱まる懸念もあります。
不採算: 遺産の商品化が必ずしも経済効果をもたらすとは限りません。観光客が増加しても、地域への経済効果が薄い場合もあります。また、新規の世界遺産が登録されると、客足が分散する可能性もあります。

対応策

遺産の商品化における問題点を踏まえ、持続可能な観光を目指すための議論が国際的に行われています。例えば、国連世界[[観光機関]]（UNWTO）と日本の観光庁は、「遺産観光に関する国際会議」を開催し、遺産の持続可能性について議論しました。

遺産の商品化は、地域活性化や経済効果をもたらす一方で、遺産の価値を損なったり、環境破壊を招く可能性もあります。遺産の持続可能な活用のためには、これらの問題点を十分に理解し、適切な対策を講じることが重要です。

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