第66回都市対抗野球大会

1995年の夏、日本の社会人野球の最高峰である第66回都市対抗野球大会が、7月22日から8月1日までの会期で、野球の聖地、東京ドームにて開催されました。この大会は、新たなチームの参入こそありませんでしたが、長らく都市対抗の舞台から遠ざかっていた古豪たちが、20年以上のブランクを経て4チームも本大会への出場権を獲得するなど、かつて大会を彩った顔ぶれが再び集結する、記憶に残る大会となりました。

特に注目を集めたのは、阪神・淡路大震災からの困難な状況を乗り越え、実に22年ぶりに都市対抗への出場を決めた小西酒造（伊丹市）でした。彼らの出場は、被災地の復興への希望を示すものとして、多くの人々に感動を与えました。また、大昭和製紙北海道の廃部に伴いクラブチームとして再出発したヴィガしらおい（白老町）が、名称変更後初めて本戦に出場。これは、日本野球連盟にクラブチームとして登録されたチームとしては、第49回大会以来、実に17年ぶりの快挙であり、社会人野球におけるクラブチームの存在感を示す出来事となりました。一方で、大会常連であった松下電器（門真市）や新日鐵広畑（姫路市）が、共に9年間続いた連続出場記録をこの大会でストップさせるなど、世代交代や勢力の変化も垣間見られました。

大会序盤では、JR四国（高松市）が1回戦で強豪・東芝（川崎市）を破るという番狂わせを演じ、創部から65年目にして都市対抗本大会での待望の初勝利を挙げました。これもまた、歴史あるチームにとって大きな一歩となりました。

今大会は、全体を通して非常に打撃力の高い試合が多く見られました。大会期間中に放たれた本塁打は通算98本に達し、これは第58回大会で樹立された大会記録を塗り替える新記録となりました。多くのチームが積極的な打撃を見せ、スタンドを沸かせましたが、決勝戦に進出したのは対照的に投手力を最大の武器とする2チームでした。すなわち、日本石油（横浜市）とNKK（福山市）です。圧倒的な打力を誇るチームが多い中で、最終的に頂点を争ったのが投手戦を得意とする両チームだったことは、都市対抗野球の奥深さを示すものでした。

決勝戦は8月1日に行われ、まさに手に汗握る展開となりました。序盤から両チームが点の取り合いを演じる乱戦模様となり、試合は延長戦に突入します。そして迎えた延長10回、日本石油が劇的なサヨナラ勝利を収め、この激戦を制しました。日本石油にとっては、2年ぶりとなる栄光、そして通算8回目の都市対抗優勝旗獲得となりました。

大会後には、個人およびチームの活躍を称える様々な表彰が行われました。最も権威ある橋戸賞には、日本石油の優勝に大きく貢献した高橋憲幸投手が選ばれました。久慈賞には、惜しくも敗れはしたものの、NKKを牽引した舩木聖士投手が輝きました。チームへの小野賞は、応援団の素晴らしいパフォーマンスが評価された仙台市・JR東日本東北チームが受賞。若獅子賞（新人選手に贈られる賞）は新日鐵名古屋から三菱自動車岡崎の補強選手として出場した谷佳知選手が獲得し、その後のプロ野球での活躍を予感させました。打撃部門では、首位打者賞に川崎製鉄千葉の児玉誠選手が、打撃賞にJR東日本東北の丹野淳一選手が選ばれました。

また、大会期間中に顕著な活躍を見せた選手たちには、ポジション別に大会優秀選手として表彰されました。投手では優勝した日本石油の高橋憲幸、春田政勝をはじめ、NKKの舩木聖士、川崎製鉄千葉の須合哲哉、西濃運輸の中ノ瀬幸泰、森昌彦、そして日本生命の杉浦正則といった名投手が名を連ねました。野手では、優勝チームである日本石油から大久保秀昭捕手、長谷高成泰二塁手、若林重喜三塁手、野島正弘遊撃手、佐野由幸外野手、高林孝行外野手、渡邉博幸指名打者などが選出された他、日本生命の仁志敏久三塁手や梶田茂生外野手、川崎製鉄千葉の児玉誠外野手、松中信彦指名打者など、そうそうたるメンバーが選出されました。

長年にわたり都市対抗の舞台で活躍し続けた選手への10年連続出場表彰も行われ、東芝の三原昇投手、河合楽器の盛隆章投手、日本生命の上和秀捕手、住友金属の杉山栄司内野手、デュプロの竹村誠内野手、小西酒造の足達尚人投手、大墨弘幸内野手、三菱重工神戸の原田三郎外野手、ヤマハの藤村勝一投手といったベテラン選手たちがその功績を称えられました。

グラウンド外でも、応援団コンクールが開催され、最優秀賞はJR東日本東北、優秀賞は川崎製鉄千葉、敢闘賞は日本石油、特別賞はNKKがそれぞれ受賞し、大会を盛り上げました。

第66回大会は、記録的な本塁打数で打撃の魅力を見せつけつつも、最後は投手力と粘り強さが勝敗を分けるという、都市対抗野球ならではの多様な魅力を凝縮した大会となりました。特に、震災からの復興やクラブチームの挑戦など、野球以外の面でも多くのドラマを生んだ大会として、深く記憶されています。

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